天文の基礎知識

4. 恒星

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夜空を見上げた時に見える星々のほとんどは恒星と呼ばれる天体です。 ステラナビゲータ では標準星表としてヒッパルコス星表を採用しており、およそ8等星までの 11万8000個程度の恒星のデータが用意されています。

さらに最新バージョンのステラナビゲータでは、Tycho星表、Tycho-2星表、GSC(ガイドスターカタログ)を標準で収録しており、表示する等級に応じて標準データと自動的に切り替えられるようになっています。 GSCを使えば、約17等星までの約1600万個の恒星を表示できるようになっています。

なおステラナビゲータでは、恒星は明るさに応じた点の集まりで表示されます。にじんだような光や、★の形に切り替えることもできます。

ステラナビゲータで表示したオリオン座周辺の恒星
図1:ステラナビゲータで表示したオリオン座周辺の恒星

恒星の明るさ

恒星には明るいものから暗いものまで、いろいろな明るさを持ったものがあります。目で見える最も明るい星を1等星、最も暗い星を6等星と決めたのはギリシャの天文学者ヒッパルコスで、紀元前150年ごろのことでした。

その後、19世紀のイギリスの天文学者ポグソンは1等星の明るさが6等星の100倍であると定義しました。

つまり、1等級明るくなるごとに約2.5倍明るくなるというわけです。

時刻系
図2:等級の定義

全天で一番明るい恒星はおおいぬ座のα星シリウスで-1.4等星です。 1等星よりも2.5倍明るい星は0等星、さらに2.5倍明るい星は-1等星のように、マイナス符号をつけてあらわします。 満月は-12.7等星ですし、太陽は-26.7等星となります。 よくUFOと間違えられる金星は、最大等級のころには-4.7等星となり、青空の中でも見ることができるほど明るくなります。

一方、暗い星の方はというと、肉眼では6等星までしか見ることができませんが、双眼鏡や望遠鏡を使用することで、さらに暗い星まで見えるようになります。 口径6cmクラスの望遠鏡では11等星を見ることができます。 さらに、望遠鏡の口径が大きくなると見える恒星の限界もどんどん暗くなっていきます。 なお、星からの光を蓄積できる写真では、さらに暗い星まで写し撮ることが可能です。

いろいろな天体の等級
図3:いろいろな天体の等級

ちなみに、6等星までの恒星を明るさ別に分類すると、1等星より明るい恒星が21個、2等星が68個、3等星が183個、4等星が585個、5等星が1,858個、そして6等星が5,503個となります。
さらに暗い星の数を調べていくと、図4のように増加し、9等星では12万個、そして17等星では1600万個にも達するのです。

恒星の等級とその数
図4:恒星の等級とその数

恒星のスペクトル型

夜空に輝く恒星をじっくりと良く観察してみましょう。 明るさが違うだけでなく、星によって色が違うことがわかるでしょう。

この色の違いは、恒星の表面温度の違いをあらわしています。 温度の低い星ほど赤く、また温度の高い星ほど青白く見えます。 赤い星の表面温度は、約3,000K(ケルビン:絶対温度の単位で、0K=-273.15℃)。青白い星の表面温度は50,000K以上にもなります。

天文学では、恒星のタイプをスペクトル型によっていくつかに分類しています。 O型は約50,000Kという高温の星で、B型は約20,000K、A型は約10,000K、F型は約7,000K、G型は約6,000K、M型は約3,000Kと最も温度の低い星となります。

私達の太陽は、表面温度6,000KのG型の恒星で、遠い宇宙空間から眺めると黄色い恒星として見えることになります。ステラナビゲータ では、星の色を10段階に分け、その色に応じて恒星を色表示しています。

ヘルツシュプルング・ラッセル図
図5:ヘルツシュプルング・ラッセル図

恒星の名前

恒星には、バイエル名、フラムスチード番号、固有名といったいくつかの名前がつけられています。

ドイツのアマチュア天文家のバイエルが1603年に出版したUranometria(星図)には、星座ごとにギリシャ文字とローマ文字を使って恒星に名前がふられていました。 これがバイエル名で、ギリシャ文字のふられた明るい恒星については現在でも使われています。

バイエルは明るい星から順に「α、β、γ…」と命名していきました。 ですから、その星座で最も明るい星はほとんどがα星ということになります。 たとえば、「夏の大三角形」を形作る3つの星は、

はくちょう座で最も明るいデネブ αCyg(はくちょう座α星)
わし座で最も明るいアルタイル αAql(わし座α星)
こと座で最も明るいベガ αLyr(こと座α星)

のようになります。

しかし、星座によっては明るさとは関係なしにバイエル名がつけられたものもあります。 有名な北斗七星などはひしゃくの先から柄に向かって、α→β→γ→δ→ε→ζ→ηの順に命名されています。 ちなみに、7つの星を明るさの順に並べ替えるとε→α→η→ζ→β→γ→δとなります。北斗七星の並びがかなり印象的だったからなのでしょう。

このような例はあちこちに見ることができます。 オリオン座のα星ベテルギウスとβ星リゲル、ふたご座のα星カストルとβ星ポルックスなどです。ステラナビゲータ で探してみても面白いかもしれません。

また、ケンタウルス座オメガ星団のように恒星ではないのに、ωCenというバイエル名をふられた天体もいくつかあります。 ペルセウス座χ星などは、有名な二重星団を構成する片方ですが、バイエルが命名した当時にはこれらは恒星だと思われていたようです。

北斗七星のバイエル名
図6:北斗七星のバイエル名

さて、さきほど出てきたデネブ、アルタイル、ベガ、ベテルギウスなどは、それぞれの恒星につけられた固有名です。 多くはギリシア語やアラビア語、ラテン語などからつけられています。 明るく目立つ恒星の大半には、固有名がつけられています。

歴史的事情で1つの星に複数の固有名があったり、複数の星が同じ固有名で呼ばれるケースがあったりしたため、2016年以降、国際天文学連合(IAU)によって正式な固有名の決定・整理が進められています。

しし座の恒星の固有名
図7:しし座の恒星の固有名

18世紀のイギリスの天文学者ジョン・フラムスチード(初代のグリニッジ天文台長)によって作成された恒星カタログに用いられた、星座ごとに赤経順につけた恒星番号をフラムスチード番号といいます。

現在では、バイエル名の付いていない恒星の場合には、フラムスチード番号が使われています。たとえば、

  • はくちょう座61番星
  • おうし座21番星

のように呼ばれるわけです。

しし座のフラムスチード番号
図8:しし座のフラムスチード番号

もちろん、バイエル名とフラムスチード番号は全く別々に命名されたものですから、バイエル名のついている恒星にもフラムスチード番号がつけられています。 ですから明るい恒星には合わせて3つの名前がつけられていることになります。 さきほどの、「夏の大三角形」の場合には、

α Cyg(はくちょう座α星) デネブ はくちょう座 50番星
α Aql(わし座α星) アルタイル わし座 53番星
α Lyr(こと座α星) ベガ こと座 3番星

のようになります。

ステラナビゲータ では、これら3種類の名前を個々に選択して、もしくは全てを同時に表示することができます。