天文の基礎知識

7. 月

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夜空に輝く天体の中で最も明るい天体といえば、もちろん月です。満月の時の月の光度は-13等級にもなります。月明かりで本を読むことだってできるほど明るい天体です。月は私達の住む地球の唯一の衛星(最近では人工の衛星が数千個も地球の回りを回っていますが)です。大きさはほぼ地球の四分の一ですが、平均距離38万キロメートルのところを回っていますので、見かけの大きさは太陽と同じくらいになります。

月はまた肉眼でその模様を見ることのできる唯一の天体(もちろん地球は除いて)で、しかも満ち欠けをしますので、古来から注目されてきた天体でもあります。

月の模様

月面には様々な模様が見られます。海と呼ばれる平地や、山脈、谷、などですが、何と言ってもクレーターと呼ばれるたくさんのアバタ模様が有名です。ステラナビゲータ で表示される月は望遠鏡で見た月面をかなり忠実に再現しており、海、山脈、クレーターなどが描かれています。

さまざまな地形につけられた名前を表示させることもできます。

クレーターが目立つ半月
図1:クレーターが目立つ半月

月の満ち欠け

月は約1カ月かかって地球の回りを公転しています。そしてその間に満ち欠けをして私達の目を楽しませてくれます。これは月が太陽の光を受けて輝いているためです。ですから月が太陽と同じ方向にあるときには月を見ることができません(唯一、日食の時だけは月をシルエットとして見ることができますが)。

月と太陽が同じ方向にあるときを新月(あるいは朔)といいます。このときの月齢を0とします。月は太陽から東側に向かって離れていきます。翌日には西空の低空に細い弧を描いて見えるはずです(実際には日没直後で見にくい)。月齢1(日本では二日月といいます)の月です。月は東へ移動しながら毎日少しづつ太っていきます。そして新月から約一週間後、太陽から90゚東に離れたところで、半月(上弦の月)となります。このときの月齢は約7です。

月はその後も太陽から離れ、太陽から180゚(つまり太陽の正反対側)に来たときに満月となります。

月の満ち欠け
図2:月の満ち欠け

ステラナビゲータ では、この満ち欠けの様子をシミュレートしています。ただ、視野範囲を広くとって表示していると、満ち欠けの様子が分りにくいですから、拡大して満ち欠けの様子を観察してみてください。

月食

月は太陽の光を反射して輝いています。それでは、太陽からの光が遮られたらどうなるでしょう。半月の時の月を見れば一目瞭然ですね。太陽の光の当っている側は光り輝いていますが、光の当っていない部分は見ることができません。

満月のときには、地球から見える月の全面太陽の光が当っていますから、丸く見えるわけです。それでは、満月の時に太陽-月-地球が一直線に並んだらどうなるでしょう。地球もまた太陽からの光を受けていますから、地球の影が太陽とは反対側に伸びているはずです。その中を月が通過すると…。月は地球の影に入ってしまいます。これが月食です。

月食にも日食と同じように3つの種類があります。皆既月食と部分月食、それに半影月食です。地球の影は月よりもずっと大きいですから、金環月食というのはありません。

月食のしくみ
図3:月食のしくみ

月が完全に地球の影(本影と言います)の中に潜入するのが皆既月食で、このとき月は赤銅色になります。月が完全に見えなくならないのは、地球の回りを取り巻く大気の層で拡散された太陽光が月面をほんのりと照らすためです。ですから波長の長い赤い光だけが届くのです(これは夕焼けと同じ理由ですね)。

皆既中の月の明るさは、地球の大気の状態によって変わります。ある年の月食では非常に明るく見えていましたが、次の月食の時には真っ黒になって、月がどこにあるのかさえ分りませんでした。このとき、地球上では大きな火山が噴火して火山灰を空高く吹き上げていたのです。

月食の時の月の明るさは地球の大気の状態を知るバロメーターとも言えるでしょう。

さて、月が地球の影をかすめて通るとき、月の一部が欠けた部分月食となります。

さらに、本影の外側には半影と呼ばれる影があります。これは太陽からの光の一部が地球によってさえぎられている部分で(月から見ると地球による部分日食が見えるはずです)、本影よりはずっと明るい部分です。この半影部分を月か通過する場合を半影月食と言いますが、肉眼ではまず識別できません。

なお、日食は限られたごく一部の地域からしか皆既(金環)食を見ることができませんでしたが、月食の場合は、その時に月が地平線上に見える場所からは同じように皆既(部分)月食を見ることができます。

ステラナビゲータ では、皆既月食と部分月食の月の経過や色の変化をリアルにシミュレートします。半影月食の場合は、本影に近い部分がわずかに暗くなります。また、地球の本影と半影の形を表示すれば、月食の経過がよりはっきりわかるようになります。