天文の基礎知識

15. 流星・火球

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星空を眺めていると、ときどき星がスーっと流れることがあります。これは、もちろん恒星ではなく、砂粒ほどの小さな天体が地球の大気に飛び込み、プラズマ化したガスが発光する現象です。これを一般に「流星」と呼びます。とくに明るいものは「火球」と呼ばれます。流星が発光するときの高度は、地上100〜200kmくらいで、消滅する高度は70〜90kmくらいとなります。なお、火球と呼ばれるものは、質量が大きく消滅点が高度40〜50kmになることもあります。

そういう意味では「流星」は天文現象というより、大気現象に分類した方がいいのかもしれません。

流星の中には、消滅後に経路に沿って淡い痕跡を残すものがあります。これを「痕」といいます。一瞬で消えてしまう短い痕(短命痕)もあれば、数秒から数分にわたってぼんやりと光る永続痕もあります。永続痕は、上空の大気の流れによって形が変わっていくようすがわかります。また、流星が大気中で消滅せず、地上に落下したものを「隕石」「隕鉄」などと呼んでいます。

晴れた夜空を眺めていると、通常は1時間に数個程度の流星を見ることができますが、季節や時間帯によって出現数はまちまちです。一晩のうちでは、夜半前よりは夜半過ぎのほうが出現数が多くなります。

流星群

流星の多くは無秩序に現れるように見えます。しかし、毎年決まった時期に、天球上のある点を中心として四方八方に飛ぶ流星の一群があります。これらを「流星群」といいます。放射の中心点を「放射点」といい、その位置の近くにある星座や恒星の名前をとって、「ペルセウス座流星群」「みずがめ座η流星群」などと呼ばれます。

流星群のもとになる流星物質の起源は、彗星や小惑星といわれています。彗星の軌道上には彗星が撒き散らした塵があり、地球がその塵の集まりの中を通過するときに流星が降り注ぎます。流星のもとになる塵は地球の大気に平行に飛び込んできますが、経路を天球上に投影すると放射状に流星が流れるように見えます。

各流星群の元になる天体を「母天体」と呼びますが、有名なペルセウス座流星群の母天体は109P/スイフト・タットル彗星です。地球軌道と彗星軌道の交点を地球が通過するのは8月13日ごろとなります。地球は毎年このころに、109P/スイフト・タットル彗星が残していった塵の帯を通過します。そして、この日がペルセウス座流星群の出現が最も多くなる日(「極大日」と呼ぶ)となります。

ステラナビゲータではランダムに現れる「散在流星」の他、次の流星群の出現をサポートします。また、主な流星群の極大日における放射点の位置も表示します。

流星群名 極大日 特徴
しぶんぎ座流星群 1/4 1年の最初の流星群。1時間あたり50個以上の出現。極大のピークは短い。速度がやや速く、痕を残すものは少ない。3大流星群の1つ。
4月こと座流星群 4/22 1時間あたり10個程度の出現。平均光度は2等級と比較的明るい。まれに突発的な大出現が見られる。
みずがめ座η流星群 5/5 ハレー彗星を母天体とする流星群。南半球では1時間あたり100個程度。日本からは条件悪く1時間あたり10個程度の出現。速度が速く、青白く、痕を残すものが多い。
ヘルクレス座τ流星群 5/31 73P/シュバスマン・バハマン彗星を母天体とする流星群。例年は目立った活動がないものの、2022年に活発な出現が予測され、アメリカなどで1時間に100個を超える流星が観測された。
6月うしかい座流星群 6/27 例年の出現は少ないが、まれに突発的な大出現が見られる。
みずがめ座δ南流星群 7/30 あまり明るくなく、ゆるやかに飛ぶのが特徴。みずがめ座δ北流星群もある。
やぎ座α流星群 7/30 出現数は多くないが、ゆっくりと流れて、末端で爆発するものが多い。
ペルセウス座流星群 8/13 スイフト・タットル彗星が母天体。1時間あたり80個以上の出現。1991年には日本で1時間あたり300個を超える出現が観測された。3大流星群の1つ。
はくちょう座κ流星群 8/18 出現数は少ないが、明るくて最後に爆発するものがある。
みずがめ座ι北流星群 8/21 7月中旬から9月上旬まで長期間の活動が見られる。みずがめ座ι南流星群もある。
9月ペルセウス座ε流星群 9/10 出現数は少ないが、流れる速度は速い。
10月りゅう座流星群 10/9 かつては「ジャコビニ流星群」とも呼ばれていた。ふだんはほとんど見られないが13年ごとに大出現することがある。
オリオン座流星群 10/21 ハレー彗星が母天体。1時間あたり10個程度の出現。速度は速く、平均光度は2等級と比較的明るく、永続痕を残すものが多い。
おうし座流星群 11/12 北群と南群に分かれていて、活動期間は10月中旬から11月末まで。1時間あたり3個程度。速度は遅く経路は長い。
しし座流星群 11/18 母天体は周期33年のテンペル・タットル彗星。2001年に日本で1時間あたり数千個という大流星雨。平均光度1.5等級で、痕を残すものが多い。
ほうおう座流星群 12/3 1956年に南極観測船「宗谷」から流星雨が目撃された。幻の流星群とされていたが、2014年に小数ながら流星の出現が観測されている。
ふたご座流星群 12/14 母天体は小惑星ファエトン。1時間あたり50個以上の出現。速度がやや速く、平均光度2等級、その1割が0等級より明るい。3大流星群の1つ。
こぐま座流星群 12/23 母天体は周期14年のタットル彗星。1980年にヨーロッパで1時間あたり50個以上の出現。通常はそう多くない。