トモエゴゼン、センサー84枚のフル構成で初観測

このエントリーをはてなブックマークに追加
東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡用超広視野カメラ「トモエゴゼン」のフルモデルが完成し、初観測が行われた。

【2019年5月7日 東京大学木曽観測所the Tomo-e Gozen Project

東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターが運営する木曽観測所には、広視野を特長とする口径105cmシュミット望遠鏡が設置されている。この望遠鏡は満月180個分に相当する直径9度の視野を一度に撮影することができ、この広い視野を活かした様々な観測研究に利用されている。

同観測所では、105cmシュミット望遠鏡の視野全面(焦点面で直径52cm)を84枚の35mmフルHD CMOSイメージセンサーで覆う超広視野高速カメラ「トモエゴゼン(Tomo-e Gozen)」の開発を進めてきた。使われるCMOSイメージセンサーはキヤノンが開発したもので、CCDに比べて高速でデータを読み出すことができ、毎秒2フレームの動画観測も行えるため、超新星などの突発天体の検出・同定観測に威力を発揮すると期待されている。

105cmシュミット望遠鏡
105cmシュミット望遠鏡(提供:東京大学木曽観測所、以下同)

「トモエゴゼン」の開発は2014年度から始まり、カメラの巨大な視野を構成するイメージセンサーユニットを1/4ずつ製作して望遠鏡の焦点面で順次結合する方式をとってきた。今回、最後となる「Q4」ユニットが完成し、ついに全84枚のCMOSセンサーが揃った。

105cmシュミット望遠鏡に取り付けられたTomo-e Gozenフルモデル
105cmシュミット望遠鏡に取り付けられたTomo-e Gozenフルモデル。右下の1/4が最後に搭載された「Q4」ユニット

Q4ユニットの取り付け完了後、4月23日には全84センサーでのファーストライト(初撮影)と、撮影画像データの同時読み出しにも成功した。実際の運用では、縦横に視野をずらしながら2×3=6枚の画像を撮影・合成することで、イメージセンサー間の隙間を埋めて直径9度分の画像を得る。この設定で毎晩全天を撮影することになっている。

ファーストライト画像
(左)84枚のセンサーの画像を並べて表示したファーストライト画像。しし座付近を露光時間0.5秒で撮影したもの。(右)84枚のうちの3枚

2019年4月5日夜には、Q4ユニットが取り付けられる直前の「トモエゴゼン」によって、しし座の銀河「SDSS J111748.57+134339.5」の中に18.7等級の天体が発見された。その後の観測で、この天体が4月6日と4月8日に明るくなっていることがわかり、爆発後間もない超新星の候補天体だと推定された。翌4月9日以降に米・ジェミニ望遠鏡や京都大学せいめい望遠鏡、広島大学かなた望遠鏡などで追観測が行われた結果、最大光度に達する前のIa型超新星であることがわかり、「SN 2019cxx」と命名された。

木曽観測所では、今年の秋から始まる「トモエゴゼン」の本格運用に向けて、大量の観測データを処理するための解析ソフトウェアも独自に開発されている。また、アメリカとイタリアの重力波検出器「LIGO」・「Virgo」からのアラートを受けた追観測の体制も始まっており、これから数か月かけて行われるカメラの試験や観測・解析システムの整備が完了した後には、「トモエゴゼン」によって数多くの成果が得られることが期待される。

関連記事