木星の中心核は激しい天体衝突の痕跡かもしれない

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探査機「ジュノー」の観測から、木星に低密度で巨大な中心核が存在する可能性が示唆されている。この核は、形成から間もない木星に地球の10倍ほどの天体が正面衝突した結果作られたものかもしれない。

【2019年8月19日 アストロバイオロジーセンターライス大学

太陽系最大の惑星である木星は、質量の90%以上が水素とヘリウムでできた巨大ガス惑星だ。その深部には岩石と氷成分からなる中心核が存在すると考えられているが、詳細は未だ謎に包まれている。木星の中心核の存在の有無および大きさは、木星誕生を紐解く重要な鍵になるとされている。

現在、NASAの探査機「ジュノー」が木星を周回しながら、大気や磁場、重力場などの調査を行っている。その重力場の測定から、地球質量の8倍以下と従来予想されていたよりもはるかに巨大な中心核が木星内部に存在し、最大で木星の大きさの半分程度にも達する可能性があることが示された。

さらに、この中心核は岩石・氷成分と水素・ヘリウムが混ざり合った、密度の低い巨大な核であることも示唆された。木星が低密度の巨大中心核を持っているとすれば、これがどのようにして誕生したのかが新たな疑問となっていた。

中国・中山大学のShangFei Liuさん、アストロバイオロジーセンターの堀安範さんたちの研究チームは、この巨大中心核の起源として、約45億年前に形成の最終段階にあった木星で大規模な天体衝突が起こった可能性に着目し、数値シミュレーションによる研究を行った。

様々な条件のシミュレーションの結果、地球の10倍程度の質量を持つ天体が木星にほぼ正面衝突した場合に、衝突天体が木星の深部まで到達し、木星の中心核と衝突合体することが示された。この際、衝突に伴う衝撃波と乱流による擾乱で木星の中心核の物質が上層部へと輸送され、周囲の水素やヘリウムと激しく混ざり合い、密度の低い巨大な中心核が形成されうることがわかった。一方、より小さな天体が衝突したり、天体が大きな角度でぶつかったりした場合には、低密度の巨大中心核は形成されなかった。

木星と地球の10倍の質量を持つ天体との正面衝突のシミュレーション結果
木星と地球の10倍の質量を持つ天体との正面衝突の様子。(左上)衝突前、(右上)木星の中心核との衝突直前、(左下)木星の中心核の破壊後、(右下)衝突から10時間後。色は密度を表す(オレンジ~黄のほうが高密度)(提供:Liu et al. 2019, Nature)

また、多数のシミュレーション結果を解析すると、衝突現象のおよそ50%は正面衝突に近いものであることがわかり、木星と天体の大規模な正面衝突は確率的にじゅうぶん起こりうる現象であることも示された。

これらの結果から研究チームは、木星の低密度で巨大な中心核の存在を説明するものとして、木星が形成の最終段階に大規模な天体衝突を経験した可能性があると結論付けている。

若い木星と原始惑星との衝突の想像図
太陽系形成初期に起こった若い木星と原始惑星との衝突の想像図(提供:K. Suda & Y. Akimoto/Mabuchi Design Office, courtesy of Astrobiology Center, Japan)

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