超新星爆発直前の星に起こった変化を初めて検出

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特異な活動を示した赤色超巨星が、130日後に超新星爆発を起こした。最期に見せた活動は、超新星前の星は比較的穏やかだという、従来の見方を覆すものだ。

【2022年1月12日 ケック天文台

超新星が見つかる銀河は一般に私たちから遠く離れているため、その中にある個々の星を見分けるのは難しい。しかし、寿命を迎えた大質量星が起こすII型超新星の場合は、爆発前の恒星が十分に明るく、超新星の発見前に撮影されていた画像の中から同定できることがある。こうして見つかった爆発前の恒星には取り立てて異常な点は見られなかったことから、II型超新星となる直前の赤色超巨星は比較的活動が穏やかなのではないかという見方があった。

2020年9月16日に発見されたII型超新星のSN 2020tlfは、この見方を大きく変えるかもしれない。

SN 2020tlfはうしかい座の方向1億2000万光年の距離にある銀河NGC 5731で見つかったが、米・ハワイのパンスターズ望遠鏡を用いて爆発直後の超新星を見つけようとするサーベイプロジェクト「Young Supernova Experiment(YSE)」は、この銀河を含む領域を2020年1月18日から継続的に観測していた。そしてSN 2020tlf発見の130日前ごろから、同じ位置にある星が顕著に増光しているのを検出していたのだ。

発見を報告した米国国立科学財団のWynn Jacobson-Galanさんたちによれば、爆発前の星は太陽の約10倍の質量を持つ赤色超巨星で、増光はこの星が激しく物質を放出したことに伴うものだという。このとき放出されたガスの成分は、後の超新星爆発の際に検出された成分と一致していた。

「これは、大質量星が最期を迎える直前のふるまいを理解する上でのブレイクスルーです。今まで、通常のII型超新星となる前の赤色超巨星で何らかの活動が直接観測されたことはありませんでした。私たちは初めて、赤色超巨星が爆発する瞬間を目撃したのです!」(Jacobson-Galanさん)。

晩年の赤色超巨星の想像図
晩年に莫大な量のガスを放出している赤色超巨星の想像図(提供:W. M. Keck Observatory/Adam Makarenko、以下同)

今回の成果が示すのは、少なくとも一部の赤色超巨星では、超新星爆発に先立って内部構造が大きく変化し、激しいガスの放出を伴うということだ。

「今後SN 2020tlfのような現象がさらに検出されれば、恒星進化の最後の数か月に関する私たちの見解に劇的な影響が及ぶことでしょう。観測者と理論家が力を合わせて、重い星が生涯の最期をどのように過ごしているのかという謎を解き明かすのです」(Jacobson-Galanさん)。

赤色超巨星がII型超新星となる様子を描いたアニメーション「Red Supergiant Star Goes Supernova」

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