ISS上で日米のX線観測装置が自動連携、突発天体に対応
【2022年10月20日 JAXA】
国際宇宙ステーション(ISS)には目的や得意分野が対照的な2つのX線天文観測装置がある。「きぼう」日本実験棟に設置されている全天X線監視装置「MAXI」はISSの動きを利用してあらゆる方向を浅く広く観測し、X線突発天体を発見することが目的だ。一方、NASAのX線望遠鏡「NICER」は中性子星など既知のX線天体を追尾観測し、深く調べるために設置された。
これら2つの装置は地上から独立に制御されているが、理化学研究所の三原建弘さんをはじめとする日米共同研究チームは、ISS上のコンピューターを経由して両者を自動的に連携させる計画「OHMAN(On-orbit Hookup of MAXI and NICER、オーマン)」を立ち上げた。
MAXIは2009年8月の観測開始以来34個の新天体を発見したが、その中には他の装置が追観測する前に減光してしまい、正体が不明なままのものもある。従来、MAXIの観測データは地上に送られてから解析され、突発現象があれば他の観測衛星等による追観測の依頼をメール等で送るという方法が取られてきたが、この流れでは発見から追観測まで少なくとも3時間以上かかり、その間に消えてゆく新天体を見逃してしまったのだ。
そこで、同じISSで稼働しているNICERで直ちにX線新天体の追観測を実施しようというのがOHMAN計画である。研究チームはMAXIの観測データから新天体を検出するソフトウェアをISS上のコンピューターにインストールし、突発現象の情報をNICERに伝えて自動観測させるシステムを構築した。これにより、MAXIの発見からNICERの追観測まで10分ほどで行えるようになった。最終的には2分にするのが目標だという。
OHMANの準備は2020年11月に本格化し、2022年5月26日にシステムが稼働した。その後、動作検証や試験運用を経て、8月10日から本格運用が始まっている。9月13日にはMAXIがペガスス座の球状星団M15の方向でX線バーストを発見し、その5分30秒後からNICERが自動観測を行うことに成功した。
今回は短いX線バーストだったため、NICERが追観測したときには既に消えていたが、OHMANによる短時間での自動連携観測は実証できたと言える。
MAXIがとらえてきた未同定天体は、太陽系近傍の暗い恒星が起こしたフレアの可能性もあれば、遠方で宇宙第一世代の恒星が起こした爆発のような新しい現象の可能性もある。いずれにしても、突発現象は発生初期段階からの詳細な観測が必要なので、OHMANによって調査が進むことが期待される。
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