数千年に一度、史上最強のガンマ線バースト

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昨年10月に検出され、異例の明るさとなったガンマ線バースト「GRB 221009A」は、数千年に一度しか起こらない規模の現象だったことがわかった。X線残光も桁外れの強さだ。

【2023年4月5日 日本大学

2022年10月9日、や座の方向19億光年の距離で、ガンマ線バースト「GRB 221009A」が発生した。NASAのガンマ線バースト観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」などによる検出を受け、世界中の天文台が残光を観測した結果、その明るさが異例なものだと判明した(参照:「観測史上最強規模のガンマ線バーストが発生」)。

このたび日本の「MAXI」研究チームなどが発表した研究成果によれば、GRB 221009Aは、それまでで最も明るいガンマ線バーストの70倍も明るく、この規模の現象が起こる頻度は1000年から1万年に一度と極めて稀だという。

MAXIは国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォームに取り付けられている全天X線監視装置だ。90分で地球を1周する間に全天をスキャンし、突発的なX線天体などを観測する。ガンマ線バーストのX線残光は急激に減光するため、タイミングが合わないとMAXIでの観測が困難なこともあるが、GRB 221009AはMAXIが最初に検出した時点で発生から41分経過していたにもかかわらず全天で2番目に強いX線源としてとらえられ、その後も7.5時間にわたる計5回のスキャンで検出され続けた。

GRB 221009A
GRB 221009Aの発生前(上)と後(下)各6時間の擬似カラーX線画像(提供:日本大学リリース)

GRB 221009Aが発生したや座の方向は天の川の流れの中にあり(銀河面に近く)、そのためガンマ線バーストは天の川銀河内の塵の層をいくつも透過して地球へ届いている。その結果、スウィフトやヨーロッパ宇宙機関のX線宇宙望遠鏡「XMMニュートン」による観測では、幾重にも重なる「X線リング」が観測された。X線リングが見られたガンマ線バーストは7例目だが、過去の例に比べてリング数が3倍も多い。

X線リング
XMMニュートンがとらえたX線リング(擬似カラー)。GRB 221009Aの発生から2日後と5日後に行われた観測を統合している。最も広いリングは満月の大きさに匹敵し、約1300光年の距離にある塵の雲から生じたもの、最も内側のリングは6万1000光年の距離にある塵から発生したもの(提供:ESA/XMM-Newton/M. Rigoselli (INAF))

GRB 221009Aの正体は超新星爆発に伴って放出されたジェットに由来するものと考えられている。MAXIなどによって明らかになったX線残光の性質は、今後ジェットの特徴を調べる上で役立てられるだろう。また、過去最大の明るさだったGRB 221009Aはガンマ線バーストとその残光の特徴がこれまでにないほど数多く詳細に観測されており、今後の研究でガンマ線バーストとその残光に関する多くの知見が得られると期待される。

長いガンマ線バーストの構成
GRB 221009Aのような継続時間の長いガンマ線バーストの構成。大質量星(左)のコアが崩壊してブラックホールが形成され、光速に近いジェットが放射される。ブラックホール近くのプラズマなどにジェットが衝突してガンマ線バーストが発生し、離れた部分の星間ガスとジェットが衝突したところから残光が放射される。画像クリックで拡大表示(提供:NASA's Goddard Space Flight Center)

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