ガンマ線バーストの爆発エネルギーは従来予測の約4倍

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ガンマ線バーストの残光に含まれる可視光線と電波の偏光から、光に変換されていない爆発エネルギーがとらえられた。実際の爆発エネルギーは、光のみから算出された従来予測の3.5倍以上だという結果が得られている。

【2022年12月16日 アルマ望遠鏡

極めて高いエネルギーを持つ電磁波であるガンマ線の放出を伴う「ガンマ線バースト」は、宇宙最大規模の爆発現象とされる。その原因は中性子星やブラックホール同士の合体、あるいは非常に重い恒星が一生の最期に起こす大爆発で、それに応じてガンマ線バーストの継続時間も変わると考えられているが、いずれの場合でも現代の天文学研究に欠かせない重要な現象だ。

ガンマ線バーストの後には、可視光線や電波などあらゆる波長の電磁波が放出される残光が観測される。この残光を、各波長に対応する様々な望遠鏡で観測してエネルギーを積算すると、ガンマ線バーストの爆発エネルギーを見積もることができる。そのうえで従来は、爆発エネルギーが100%光に変換されていると想定されていた。光にならなかった爆発エネルギーは、通常の観測ではとらえられないからだ。

台湾・国立中央大学の浦田裕次さんたちの研究チームは、ガンマ線バーストの残光の偏光(電磁波における波の向きの偏り)に着目した。偏光からは、光が放射された場所における電場などの情報が読み取れるからだ。ここで重要なのは、異なる波長で偏光を調べ、その度合いを比較することである。この種の観測がガンマ線バーストで行われたことはこれまでなかった。

浦田さんたちはヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTと、アルマ電波望遠鏡を緊密に連携させ、2019年12月21日にポンプ座方向83億光年彼方で発生した典型的なガンマ線バースト「GRB 191221B」の残光の偏光を可視光線と電波で同時に観測した。

ガンマ線バーストGRB 191221Bの想像図と、普通の光と偏光光での観測像
(左)ガンマ線バーストGRB 191221Bの想像図。(右下挿入図)普通の光と偏光した光で観測した像(提供:Urata et al./Yu-Sin Huang/MITOS Science CO., LTD.)

可視光線と電波における偏光の違いから、ガンマ線バーストの残光を放射している衝撃波の詳細な状態が明らかになり、爆発エネルギーのうち光に変換されていたのは30%以下だと判明した。つまり、変換効率が100%だと仮定していた従来の推定と比べると、典型的なガンマ線バーストであるGRB 191221Bの爆発エネルギーは3.5倍以上大きかったというわけだ。

ガンマ線バーストの爆発エネルギーは、爆発前の天体の性質と密接に結びついている。ガンマ線バーストを引き起こす大質量星は宇宙の進化史とも密接に関わっているので、その影響は大きい。「観測例を増やして、ガンマ線バーストの正体を明らかにしたいです」(東北大学学際科学フロンティア研究所 當真賢二さん)。

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