観測データと機械学習の組み合わせでガンマ線バーストの距離測定精度が大幅向上
【2024年7月16日 総合研究大学院大学】
宇宙最大の爆発現象であるガンマ線バースト(GRB; Gamma Ray Burst)は、継続時間2秒程度を境に(例外的なものを除いて)ショートとロングの2種類に分けられている。ロングGRBは大質量星が寿命を迎えて超新星爆発を起こしたときに発生し、ショートGRBは中性子星などの恒星が死んだ後に残る残骸同士が衝突・合体するときに発生することが知られている。その放射エネルギーは膨大で、太陽が一生かけて放出する量に相当する。
GRBは極めて明るいので、130億光年以上彼方で発生したものも観測でき、初期宇宙を調べるための道具として利用することができる。しかし、天体の距離の目安である赤方偏移がわかっているGRBのサンプルは、観測技術の限界が理由でじゅうぶんな数が得られていない。NASAのガンマ線バースト観測衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」(以下、スウィフト)によって検出されたGRBのうち、赤方偏移が明らかになっているのは23%にとどまっている。
総合研究大学院大学のMaria Giovanna Dainottiさんたちの研究チームはこの問題に対し、機械学習を用いて、GRBの赤方偏移の正確な決定を可能にする効果的な手法を開発した。
Dainottiさんたちは、スウィフトで観測したGRBの残光データに、複数の機械学習モデルを組み合わせた「アンサンブル学習」を適用して、総合的な予測能力を向上させた。続いて、スウィフトやすばる望遠鏡などが観測したものの距離がわかっていなかったロングGRB計154天体にこの手法を適用し、正確な距離を測定した。これらの測定は、距離に依存しない観測量のみに基づいて行われている。
今回の研究により、距離が既知のロングGRBの天体数を大幅に増やすことができた。「この手法は非常に正確なので、推定された距離を使って特定の空間と時間におけるGRBの発生頻度を決定できます。その頻度は、観測で実際に得られているものに非常に近い値になることがわかりました」(ポーランド・ヤギェウォ大学 Aditya Narendraさん)。
「ガンマ線天文学と機械学習の両分野における新たなフロンティアを切り開く研究です。今後の追跡調査と高度な機械学習手法の導入により、さらに信頼性の高い結果が得られるでしょう。宇宙が生まれたころに起こっていた様々なプロセスや宇宙の進化といった、重要な宇宙論的な疑問に答えることができるようになると期待しています」(Dainottiさん)。
〈参照〉
- 総合研究大学院大学:宇宙の飛躍:米国航空宇宙局(NASA)のスウィフト衛星と人工知能が最も遠いガンマ線バーストの距離を解明
- 論文:
- The Astrophysical Journal Letters:Gamma-Ray Bursts as Distance Indicators by a Statistical Learning Approach
- The Astrophysical Journal Supplement Series:Inferring the Redshift of More than 150 GRBs with a Machine-learning Ensemble Mode
〈関連リンク〉
- The Neil Gehrels Swift Observatory:
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