一見孤立したガンマ線バースト、実は遠方銀河の中にいた
【2022年8月1日 NOIRLab】
宇宙における最も高エネルギーの爆発現象であるガンマ線バーストのうち、ガンマ線の放出が数秒以内に終わるショートガンマ線バーストは、中性子星などの高密度天体同士が合体するときに生じると考えられている。こうした現象は銀河の中で発生すると考えられるので、銀河を調べることがガンマ線バーストを詳しく知る上で欠かせない。ところがショートガンマ線バーストの中には、既知の銀河から遠く離れた場所で生じているものがあり、謎を呼んでいた。
銀河に属さずに孤立しているショートガンマ線バーストについては、2つの説明が提唱されている。一つは、合体前の連星は銀河の中で生まれたが、それが銀河間空間へ弾き出されてしまい、何十億年も漂ってから衝突に至ったというものだ。もう一つは、連星は実は銀河に属しているが、あまりに地球から遠く離れているため、極めて明るいガンマ線バーストは観測できても、母銀河は暗くて容易には検出できないという説である。
この問題を解決すべく、米・メリーランド大学/ジョージ・ワシントン大学のBrendan O'Connorさんたちの研究チームは、NASAの天文衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」がとらえたショートガンマ線バースト159個のデータを見直すことから始めた。バーストが発生した方向が精度良く特定できないものを除くと、ショートガンマ線バーストの方向に銀河があるかわからない例は全体の3割程度にあたる49件だった。
研究チームはこのうち31個のショートガンマ線バーストが起こった方向を、米・ハワイのW. M. ケック天文台やジェミニ北望遠鏡と、チリのジェミニ南望遠鏡などの大型望遠鏡で深く観測した。すると18個について、これまで知られていなかった母銀河を発見することに成功した。O'Connorさんたちは残るガンマ線バーストの多くについても、あまりに暗いだけで母銀河自体は存在していると考えている。
今回の研究から導かれる重要な結論の一つは、ショートガンマ線バーストは、これまで考えられていた以上に遠い、つまりそれだけ宇宙誕生からの歴史が浅いころの銀河で発生していることだ。
ショートガンマ線バーストを生じさせる中性子星同士の合体の際には、金や白金などの重元素も生成される。初期宇宙においてショートガンマ線バーストが予想以上に多く発生していた可能性を示した今回の成果によれば、宇宙はこれまで知られていたよりもはるかに早くから重元素に富んでいたのかもしれない。
〈参照〉
- NOIRLab:Gemini Telescopes Help Uncover Origins of Castaway Gamma-Ray Bursts
- W. M. Keck Observatory:Hawaiʻi Telescopes Help Uncover Origins of Castaway Gamma-Ray Bursts
- MNRAS:A deep survey of short GRB host galaxies over z ∼ 0 − 2: implications for offsets, redshifts, and environments 論文
〈関連リンク〉
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