中性子星で起こる、地球の地震とそっくりの余震

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高速電波バーストの統計的研究から、バースト発生源とされる中性子星で地球の地震とそっくりの余震が起こっていることが明らかになった。

【2023年10月17日 東京大学大学院理学系研究科

2007年に発見された「高速電波バースト」(fast radio burst; FRB)は、わずか数ミリ秒という短い時間に電波で輝く突発天体で、これまでに700個以上が検出されている。そのうち50個ほどは、繰り返してバーストを起こす「反復型高速電波バースト」で、すでに数千回ものバーストが検出されている活発なFRB源もある。

反復型高速電波バーストを引き起こしているのは、大質量星が重力崩壊して超新星爆発をした後に残る中性子星だと考えられている。中性子星のうち強い磁気を持ち自転に伴って周期的なパルスを発するものは「パルサー」と呼ばれ、天の川銀河内に1000個以上見つかっている。さらに、普通のパルサーの100倍以上の強力な磁気を帯びた中性子星である「マグネター」は、中性子星の中でも特にFRBと関連が深いとみられている。マグネターは天の川銀河内で数十個見つかっていて、ガンマ線やX線での爆発的な増光が観測されているほか、FRBの検出例もある。しかし、マグネターがFRBを引き起こすメカニズムはほとんどわかっていない。

マグネターの想像図
マグネターの想像図(提供:ESO/ L. Calçada

マグネターで起こる爆発のメカニズムとして、マグネターの持つ強い磁気エネルギーが徐々に内部から浮上し、天体の表面を覆う固体の殻を歪め、蓄積されたエネルギーが「星震」によって突然解放される現象だとする説が有力だ。星震は地球でいう地震に相当する現象であり、地震や、太陽表面の磁気エネルギーが爆発的に解放される「太陽フレア」との類似性が議論されてきた。

東京大学の戸谷友則さんと都築雄弥さんは、中性子星で発生している多数のFRBの発生時刻の統計的性質に着目し、二点相関関数と呼ばれる数学的な手法をFRBに適用した研究を行った。

活動的な3つのFRB源から検出された7000回に近いバーストの発生時刻とそのエネルギーとの相関を調べたところ、1つのバーストが発生した直後に、関連した「余震」のバーストが起こりやすいことが示された。また、余震の起こりやすさ(頻度)が時間経過と共に減っていき、その減り方が地球の地震のものとよく似ていることもわかった。

さらに、バースト(星震)の後に余震が起こる確率も似ているほか、その確率はFRBや地震の活動性とは関係がない(FRBや地震が頻発しても余震の発生率は変わらない)こと、あるFRBや地震とそれに続く余震の間にエネルギーの相関が見られないことも共通していた。これだけの類似点は偶然の一致とは考えにくく、FRBと地震という2つの現象の間に本質的な共通点があることが示唆される。

高速電波バーストと地震の余震の類似性
高速電波バーストと地震の余震の類似性。(上)FRBおよび地震の発生時刻とエネルギーの分布の一例。(下)解析して得られた相関関数。余震の起こりやすさを、前のイベントからの経過時間の関数で示したもの。どちらの現象でも、ある現象の継続時間(FRBは数ミリ秒、地震は数分)より長い時間領域で、直線的に右下がりになっていて、余震の頻度が時間差tのべき乗(1/tp)で減衰していることを示す(提供:東京大学大学院理学系研究科リリース)

一方で、太陽フレアに同じ解析を行った結果、太陽フレアはFRBや地震とは全く異なるという結果が得られた。太陽フレアとマグネターは共に磁気エネルギーで起こる現象と考えられているが、太陽表面が気体(流体)であるのに対し、中性子星の表面や地球の地殻は固体であるという点が異なる。これらの共通点と相違点から、FRBのメカニズムは、地殻の破壊によって中性子星表面の固体殻に蓄積されたエネルギーが突発的に解放されるという、地震によく似たものであることが強く示唆される。

今回の成果は、FRBの起源解明につながる強力な手がかりとなるだろう。今後、地震との比較研究から、中性子星の表面地殻や内部物質に関する新たな知見が得られることも期待される。

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