国内で初めて高速電波バーストの検出に成功
【2023年1月19日 国立天文台水沢】
高速電波バースト(Fast Radio Burst; FRB)は、空のある方向から継続時間が数ミリ秒というごく短い電波のパルスが届く天文現象で、2007年に初めて発見された。一部のFRBでは母銀河が特定されていて、多くのFRBは天の川銀河の外で起こる現象だと考えられるが、詳しい母天体や電波が放射される仕組みは謎だ。
ほとんどのFRBは電波が一度しか観測されない「単発型」だが、天球上の同じ場所で何度も電波パルスが観測される「リピート型」のFRBも存在する。なぜ2種類のFRBが存在するのかもわかっていないが、電波パルスのエネルギー密度(明るさ)は単発型FRBの方がリピート型よりも高い傾向がある。2020年に発見された「FRB 20201124A」は最も活動的なリピート型FRBの一つで、2021年4月には1000回以上のFRBが観測された。2022年1月下旬にもバーストが観測され、再び活動期に入っているとみられている。
FRBの正体を解明するためには、様々な周波数帯でFRBを観測し、放射の性質や周囲の環境を知る必要がある。しかし、現状ではほとんどのFRBは600MHz付近や1.5GHzの周波数帯で検出されてきた。
東京大学の池邊蒼太さんたちの研究チームは、JAXA宇宙科学研究所(ISAS)の臼田宇宙空間観測所(長野県)にある64m電波望遠鏡を用いて、FRB 20201124Aを約2GHzと8GHzの周波数帯で合計約8時間にわたって観測した。その結果、2022年2月に2GHzの周波数で1個のFRBを検出することに成功した。日本の望遠鏡がFRBをとらえたのはこれが初めてで、これまでで最も高い周波数でFRBを検出した観測例でもある。
FRBの電波パルスは宇宙に存在する自由電子の影響によって、宇宙空間を伝わるうちに周波数ごとに速度の差が生じ、周波数が高い電波ほど早く、周波数が低い電波ほど遅く地球に到着する性質がある。今回の観測ではこの特徴もとらえられている。
今回のバーストの持続時間とエネルギー密度を過去のFRBと比較したところ、今回の現象は他の多くのリピート型FRBよりもずっと明るく、単発型FRBとほぼ同じであった。このことから池邊さんたちは、リピート型FRBも場合によっては単発型FRBと同程度まで明るくなるケースがあり、これまで単発型とされていた観測例の中にはリピート型も混ざっている可能性があると考えている。
臼田64m電波望遠鏡は1984年から運用されている電波望遠鏡で、「はやぶさ2」などのISASの探査機との通信に長年使われている。今回の成果は、こうした歴史ある望遠鏡が天文学の最前線で現在も活躍できることを示すものでもある。
〈参照〉
- 国立天文台水沢:臼田64m電波望遠鏡を用いた日本初の高速電波バースト検出
- PASJ:Detection of a bright burst from the repeating fast radio burst 20201124A at 2 GHz 論文
〈関連リンク〉
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