中性子星に流れ込むガスをX線で「CTスキャン」
【2026年7月3日 XRISM】
中性子星やブラックホールのような、小さい領域に大質量が集中した高密度天体は「コンパクト天体」と呼ばれる。コンパクト天体と恒星の連星では、恒星の物質がコンパクト天体の強い重力によって引き寄せられ、コンパクト天体へと流れ込んでいく。このとき物質はコンパクト天体の周りを回転しながら落ちていき、その途中で解放した重力エネルギーによってX線で明るく輝く。

コンパクト連星系のイメージアニメーション。コンパクト天体へ流れ込んだ物質が円盤を形成している(提供:鮫島直人(BinSimを用いて作成))
この物質の様子を直接観測することは困難だが、連星系の軌道運動に伴って生じる電磁波のエネルギーの変化(ドップラーシフト)は測定できる。この変動を連星軌道周期にわたって調べる「ドップラートモグラフィー」の手法を用いれば、どの方向にどのくらいの速さで流れる物質からの放射が強いのかを明らかにできる。医療のシーンで、人体を様々な方向から調べて内部の断面像を作る「CTスキャン」のようなものだ。
JAXA宇宙科学研究所の鮫島直人さんたちの研究チームは、X線分光撮像衛星「XRISM」で、みなみのかんむり座の中性子星連星系「4U 1822-371」に対してX線ドップラートモグラフィーを適用した観測を実施した。ドップラートモグラフィーではエネルギーを細かく見分けることが必要であり、この能力を持つXRISMの軟X線分光装置「Resolve」のおかげで実現した。X線によるドップラートモグラフィーは世界初となる。

(左)ドップラートモグラフィーの概念図。連星系が公転するため、この系を医療CTスキャンのように様々な角度から観測でき、運動速度に応じた光のエネルギーのずれ(ドップラーシフト)が測定できる。(右)連星の軌道位相(Phase)ごとの鉄蛍光輝線のスペクトル。連星系を見る方向によって輝線の中心エネルギーが変動していることがわかる(提供:鮫島直人(Sameshima et al. (2026) をもとに作成)、以下同)
その結果、鉄の蛍光輝線の中心エネルギーが、連星軌道運動に伴って周期的に変動している様子が観測された。また、物質の速度分布を“画像化”して鉄蛍光X線の発生場所を調べたところ、伴星から流れ込んだ物質がコンパクト天体の周りの円盤と衝突して円盤上空に拡散した領域という、予想外のところから放射されていることも明らかになった。

ドップラートモグラフィーによる鉄蛍光輝線の速度マップ(物質の空間分布ではなく、速度の分布を表す)
これまでのドップラートモグラフィーでは主に可視光線を放つ比較的低温な物質の流れを明らかにしてきたのに対し、今回初めて実現したX線ドップラートモグラフィーは、コンパクト天体近傍で強烈なX線を受け止めて光る高温物質を浮かび上がらせた。今後この手法を様々なコンパクト天体に適用することで、こうした物質の流れや構造を詳しく調べられるようになると期待される。
〈参照〉
- XRISM:XRISM、中性子星に流れ込むガスを “CTスキャン”
- PASJ:X-ray Doppler tomography of Fe Kα emission in a low-mass X-ray binary 4U 1822−371—A localized reflector at the accretion stream–disk overflow 論文
〈関連リンク〉
- XRISM:
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