金星の赤道ジェットの生成・変動メカニズムを解明
【2023年12月19日 京都産業大学】
金星には秒速約100mもの東西風「スーパーローテーション」が吹いている。自転周期が243日と非常に長く自転速度の遅い金星で、なぜこのような高速風が吹いているのかは、長きにわたり大きな謎だったが、日本の金星探査機「あかつき」の観測によってスーパーローテーションの維持メカニズムが解明された。
さらに「あかつき」は、金星大気の高度47~55kmにおいて、赤道付近で回転速度が最大となるような帯状東西風「赤道ジェット」を発見した。赤道ジェットには時間的に大きく変動している可能性も示されていて、その生成と変動のメカニズムの解明が課題として残されていた。
京都産業大学の髙木征弘さんたちの研究チームは大気大循環モデルを用いた数値シミュレーションにより、赤道ジェットの生成メカニズムと準周期変動のメカニズムを調べた。その結果、赤道ジェットは5.8日周期で金星を一周する惑星規模の波(5.8日波)による赤道方向への角運動量輸送で生成されることが示された。
5.8日波は、東西風の緯度分布を原因とする不安定(ロスビー・ケルビン不安定)によって励起され、高度70km付近で観測されている5日周期の波に対応する大気中の波だ。この5.8日波によって作られた赤道ジェットは、7日周期をもつ惑星規模の波(7日波)が高緯度方向へと角運動量を輸送することによって破壊される。このように金星大気中で5.8日波による生成と7日波による破壊が交互に繰り返されることで、赤道ジェットの準周期的な変動が引き起こされるという。ただし、7日波は今回のシミュレーションで見出されたもので、赤道ジェットのもつ不安定によって作られるが、実際の観測ではまだ発見されていない。
今回の研究結果は、「あかつき」の観測で発見された赤道ジェットの生成・変動メカニズムをうまく説明するだけでなく、金星大気中に地球には存在しない様々なタイプの惑星規模波が存在していることを示唆するものだ。今後さらなる観測により、惑星規模波の存在やその構造が明らかになると期待される。
〈参照〉
- 京都産業大学:宇宙物理・気象学科 髙木教授が執筆した金星の赤道ジェットの時間変化に関する論文が出版されました
- Journal of Geophysical Research, Planets:Formation and Quasi-Periodic Variation of Equatorial Jet Caused by Planetary-Scale Waves in the Venusian Lower Cloud Layer 論文
〈関連リンク〉
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