ボイジャー1号が5か月ぶりに不具合から一部復活

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送出データが壊れた状態になっていたボイジャー1号のプログラムを修正する作業が成功し、約5か月ぶりに探査機のテレメトリデータが正常に受信された。

【2024年4月26日 NASA JPL

1977年に打ち上げられたNASAの惑星探査機「ボイジャー1号」は、現在は太陽圏から脱出し、へびつかい座の方向約162.6天文単位(約243億km)の距離にあって、星間空間を飛行している。地球との通信には片道25.5時間かかる。

ボイジャー1号
星間空間を飛行するボイジャー1号のイラスト。ボイジャー1号は2012年に太陽圏を脱出して星間空間に入った(提供:NASA/JPL-Caltech)

昨年11月14日から、ボイジャー1号が地球に送ってくるデータが壊れ、探査機の状態や科学観測データを読み出せない状態に陥っていた。ボイジャーの技術チームでは、ボイジャーからデータを送信する前にデータ形式を変換する「飛行データサブシステム(FDS)」という部分に異常が発生している可能性があると考え、FDSのメモリの内容を地球に送るよう、ボイジャーに向けて3月1日にコマンドを送信した。

ボイジャーから3月3日に返ってきたデータも相変わらず壊れた状態だったが、その中にこれまでとは異なる形のデータが含まれていた。そこで技術チームは3月7日からこの部分の解読を試み、3月10日になって、このデータがFDSメモリの中身を表していることを突き止めた。

解読されたメモリ内容を分析したところ、FDSのメモリ領域の約3%でデータが壊れており、この破損した部分に記録されていたプログラムが正常に動かなくなったせいで、ボイジャーから送出される信号が異常な状態になっているらしいことが明らかになった。壊れたメモリ領域の書き込みを担当しているコンピューターチップが、宇宙線の影響か経年劣化によって故障したことが原因らしいと考えられている。

そこで技術チームでは、FDSメモリ上でまだ正常に読み書きできる領域に、このプログラムを移すことにした。しかし、プログラム全体を書き込めるだけのまとまった領域はなかったので、プログラムを書き換え、複数のメモリ領域に分割して書き込むことにした。それに伴い、このメモリ領域を参照している部分も全て修正する必要があった。

4月18日、技術チームは問題のプログラムを新しいメモリ領域へと移す修正を行い、20日にその結果を受信して、修正がうまくいったことを確認した。約5か月ぶりに、ボイジャーのテレメトリデータを正常な形で受け取ることができたのだ。

ボイジャー技術チーム
4月20日、ボイジャー1号のプログラムの修正作業に成功し、探査機のテレメトリを正常に受信できたことを確認して喜ぶ、ボイジャー技術チームの皆さん(提供:NASA/JPL-Caltech)

今後数週間をかけて、技術チームは残っているプログラムの移動作業も進める予定だ。これがうまくいけば、科学観測データも正常に受け取れるようになる見込みだ。

ボイジャー1号と同じ1977年に打ち上げられ、木星から海王星までの惑星を探査した「ボイジャー2号」の方は、現在も正常に動作している。2号はくじゃく座の方向約136.1天文単位(約203億km)の距離を飛行中だ。2機のボイジャーは、1972年と1973年に打ち上げられた木星探査機「パイオニア10号・11号」(現在は運用終了)を追い越して史上最遠の距離に達し、史上最長の運用期間を更新し続けている宇宙機となっている。