天体観測「専用」双眼望遠鏡「StellaBino-50」新発売
【2024年7月17日 星ナビ編集部】
笠井トレーディングは、口径50mmF4の屈折鏡筒を2本連結した、新しいコンセプトの天体観測「専用」の双眼望遠鏡「StellaBino-50」を発売した。基本は双眼望遠鏡なので、正立プリズムを持たず倒立像で天体を観測する。
StellaBino-50は、プリズム類を含まないシンプルな構造により、一般的な双眼鏡とは段違いのクリアでシャープな像質が得られる。また、アイピースの交換が可能なため、倍率の変更が自由でフィルターワークも自在。さらに、プリズムによる視野制限が無いため、φ31.7mmアイピースで最大視野が確保できる。手持ちで軽快に使用できる双眼鏡的なフォルムと、天体望遠鏡として要求される基本的な機能・構造が両立している。660gの軽量な筐体は手に馴染むホールド感を確保しつつ、本格的な天体望遠鏡と同様の諸仕様も備わっており、まさに天文マニア「だけ」のために創り出された画期的な双眼望遠鏡だ。
- ■ 発売概要
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- ブランド名:KASAI
- 商品名:StellaBino-50 口径50mm F4 焦点距離200mm
- 販売価格(本体のみ):税抜 45,000円(税込 49,500円)
- ■ スタンダードセット
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- セット内容:StellaBino-50本体、PF-25mm(8倍)アイピース×2本
- 販売価格:(税抜 62,000円のところ)税抜 60,000円、(税込¥68,200のところ)税込 66,000円
- ■ DEEP-SKYセット
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- セット内容:StellaBino-50本体、PF-25mm(8倍)アイピース×2本、3.7mmUHCフィルター×2枚
- 販売価格:(税抜 74,000円のところ)税抜 70,000円(税込 81,400円ところ)税込 77,000円
■開発コンセプト
もとより、双眼鏡というものは地上観測用に作られている。天体用にも使用できるが、それはあくまで「流用」で、常に「正立像であること」が絶対条件となっている。しかしながら、その正立像を得るには、複数のプリズム類を組み込まなければならず、像質劣化や光量損失が生じてしまう。さらに、プリズムのサイズによる視野制限も生じる。例えば、一般的な5cm双眼鏡の場合、倍率にかかわらず7゜以上の実視野を確保することは物理的に不可能なのが実状だ(もちろん、巨大なプリズムを組み込んで超広視野を実現している機種もあるが、それらは概して非常に重く大きくかつ極めて高価となっている)。倍率が固定されているのも不便な点だ。また、アイピースも筐体内に組み込まれているため、フィルターの装着も容易ではない。
いっぽう、天体望遠鏡は一般的に倒立像で、これは対物鏡の性能を最大限に維持・発揮するためであることは周知の通りだ。そもそも天体に明確な上下は存在せず、また多くの天文マニアは天体望遠鏡の使用で倒立像に馴染んでいるため、天体用に特化する限り、「正立像」というファクターは必ずしも必要ではないと思われる。むしろ、このファクターを捨て去ることで得られるメリット(シャープネス・視野の広さ・明るさ、など)の方がはるかに大きい。他方、アイピースが交換できて倍率を簡単に変えられ、かつ視野制限もなく、フィルター類の装着も自在にできることは、大きなアドバンテージであり、天体用としては欠かせないファクターだ。
地上観測用として作られている双眼鏡と従来の一般的な天体望遠鏡の特長やデメリットを踏まえて、「双眼鏡の利便性や操作感を維持しつつ、天体望遠鏡としての機能を装備した『天体専用』の双眼鏡を創ろう」というのが、本機開発の端緒。以降、構想から数年に亘って何台もの試作を重ねて、最終的に本機の生産・販売に至ったという。
■製品特長
◆光学系◆
天体望遠鏡用として設計・製造された高精度な2枚玉アクロマート5cmF4対物レンズを搭載。ブロードバンド・フルマルチコートが施されており、99.5%以上の高い透過率を示す。短焦点ながら結像性が非常に高く、20×程度の高倍率域まで余裕でシャープネスを保つ。色収差も良好に補正されており、星野観望における実用範囲内の倍率域においては、ほとんど気にならないレベルに抑えられている。プリズムを用いないシンプルな構造と相まって、一般的な5cm双眼鏡とは段違いの明瞭でクリアな像質が得られる。
◆接眼部仕様◆
合焦機構は、滑らかな回転ヘリコイドを採用。IF双眼鏡と操作性が同一であるため、合焦操作に違和感を感じることはない。合焦ストロークは16mm、最大バックフォーカスは8mmを確保しており、ほぼすべてのアイピースで確実に無限遠合焦を得ることができる。31.7mmアイピースアダプターには、センタリング保持性を重視した金属リング締付式を採用。アイピース交換が簡単な上、常に確実で正確なアイピース固定が可能。
◆筐体仕様◆
手持ちで使用することを前提とした、手に馴染む双眼鏡的なフォルムと、天体望遠鏡として要求される基本的な機能・構造を両立させた独自設計を採用。筒先には長さ50mmの対物フードを設置。周囲が明るい場所での観測においても確実に斜入光を遮断。フード内面及び筒内は全面に低反射黒色塗装済。さらに筒内部には通常の天体用屈折望遠鏡と同様の遮光バッフルが設けられており、内面反射を防いで像面コントラストの向上に大きく寄与している。両筒の連結にはオーソドックスな「中折れ式」を採用しているため、普通の双眼鏡と同じ操作感で目幅調整等が可能。もちろん三脚アダプター取付用のネジ穴も中心軸前方に設けられており、別売の「三脚取付用アダプター」を併用すれば写真三脚などに搭載可能。ストラップ(付属)用の穴も左右側面に設けられている。
◆エキセントリック視軸調整機構◆
両筒の視軸は正確に調整された状態で出荷されるが、アイピース交換式双眼望遠鏡の宿命として、実際の使用時に必ずしも完全な視軸状態が保てない場合もある。とくに、バレルに段差があるアイピースの場合、装着時にわずかな傾きが生じる可能性がある。また重量のあるアイピースの場合、接眼部自体がわずかにたわんで視軸が微妙に狂うケースも考えられる。この問題をユーザーサイドで簡単に解決できるよう、本機に両筒の本体とアピースアダプターの間に視軸調整装置を配置。一般的に「エキセントリック視軸調整機構」と呼ばれる構造で、わずかに偏心した2つのリングを連結し、双方を適宜回転させることで視軸を追い込む方式。通常は対物レンズのセル内部に設けられているもので、ユーザーサイドでの調整は困難なものだが、本機では鏡筒後部の外側に2対の調整リングを設けることで、必要に応じて簡単に調整できるようになっている(注:視軸は正確に合わせた上で出荷されるため、通常の使用において再調整の必要はない。本機能は必要な場合にのみ使用のこと)。
- ■ 主な仕様
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- 有効口径:50mm
- 焦点距離:200mm
- 口径比:F4
- 最大寸法:255mm×120mm×57mm
- 本体重量:660g
- 合焦機構:IF(個別ピント調整方式)
- 適合目幅:58~74mm
- 接眼部規格:回転ヘリコイド(IF) / φ31.7mm差込 (金属リング締付式)
- その他の仕様:対物フード付 / 三脚アダプター装着用ネジ穴付(蓋付) / エキセントリック視軸 / 調整機構装備(両筒)
- 付属品:ネックストラップ
- その他:推奨されるアイピースの一覧は、StellaBino-50の製品ページを参照のこと。
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