50年来の謎に答え、金星の下層ヘイズは流れ星由来だった

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約50年間正体不明だった金星の下層大気に漂う微粒子の起源が、上空から降り注ぐ宇宙塵であることがシミュレーション研究で実証された。

【2026年4月21日 東北大学

金星は大きさや内部組成が地球とよく似ていることから、地球の双子星や兄弟星と呼ばれることがある。しかし、厚い二酸化炭素の大気と硫酸の雲に覆われ、表面は高圧かつ約460℃もの高温に達していて、地球とは似ても似つかない過酷な環境の天体だ。

金星
探査機「あかつき」が撮影した金星。(左)紫外線画像、(右)金星の夜側の赤外線画像。赤外線画像では暗い領域ほど雲が厚く、場所ごとの色の違いは雲を構成する粒子のサイズや成分が異なっていることを示す)(提供:JAXA/ISAS/DARTS/Damia Bouic

金星の雲は高度約47~70kmに存在し、その下の領域には「下層ヘイズ」と呼ばれる微粒子が浮遊していることが、過去の探査から判明している。硫酸の液滴は高温の下層大気では蒸発してしまうため、下層ヘイズの正体は硫酸以外の蒸発しにくい物質であると考えられてきた。その候補として、火山灰や地表の塵、硫黄の結晶など様々な説が提案されてきたが、いずれも観測データを十分に説明できず、その起源は50年もの間謎に包まれていた。

東北大学の狩生宏喜さんたちの研究チームは、金星の雲形成プロセスをナノメートルサイズの微細なスケールから再現できる雲微物理モデルを開発し、新たに宇宙塵の流入プロセスを組み込んだ。宇宙塵は日々惑星に降り注いでおり、高度約110km付近で燃え尽きた後に微細な鉱物粒子となる。狩生さんたちは、このプロセスに着目した。

シミュレーションの結果、上層で発生した鉱物粒子が硫酸雲に取り込まれゆっくりと下降し、さらに雲の下で硫酸が蒸発した後に大気中に残ることによって下層ヘイズが形成されていることが明らかになった。

下層ヘイズの形成メカニズム
下層ヘイズの形成メカニズム。 上空から降り注いだ宇宙塵が硫酸の雲に取り込まれ、雲底で硫酸が蒸発した後に大気に取り残され合体成長し、下層ヘイズが作られる(提供:東北大学リリース、以下同)

この過程で形成される粒子のサイズや分布は、1970年代に旧ソ連の探査機「ベネラ」とNASAの探査機「パイオニア・ビーナス」が観測したデータと極めてよく一致した。また、この下層ヘイズは高度40km付近で形成された後、再び雲層に輸送されることで雲の核となり、金星における雲の生成を20~30%ほど促進する働きがあることも示された。

雲の質量密度分布
計算された雲の質量密度分布。実線が本研究の計算結果、点線はパイオニア・ビーナス(PV)による観測値。宇宙塵の流入を考慮することで観測結果が精度よく再現された

さらに、金星大気中に存在し強い太陽の紫外線を吸収する未知の物質について、狩生さんたちは宇宙塵に含まれる鉄などの金属成分がその正体である可能性を提唱した。宇宙塵が燃えかすとなるだけでなく、太陽エネルギーの吸収や雲の生成を通じて、金星の気候システムを構成する重要な要素であるということを示唆するものだ。

今回示されたヘイズの形成プロセスは、木星や土星といった巨大ガス惑星や、近年次々と発見されている系外惑星でも起こり得る。宇宙からの物質供給が惑星の気候を左右するという新しい視点は、様々な惑星の気候形成を理解する上での重要な要素の一つとして位置付けられることになるだろう。