宇宙に広がる放射超過の謎に迫る超小型衛星「VERTECS」が定常観測開始

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今年6月に打ち上げられた超小型天文衛星「VERTECS」が試験観測を完了し、定常観測を開始した。既知の銀河だけでは説明できない、宇宙に広がる放射超過の謎に迫る。

【2026年9月14日 JAXA宇宙科学研究所

「VERTECS(ヴァーテックス、Visible Extragalactic background RadiaTion Exploration by CubeSat)」は、6月12日に鹿児島県・種子島宇宙センターからH3ロケット6号機で打ち上げられた、日本の超小型天文衛星である。搭載観測装置の軌道上性能評価や試験観測などを経て、先ごろ1年間にわたる定常観測運用を開始した。

VERTECSの副カメラが撮影した地球
VERTECSの副カメラが撮影した地球。この画像から、同衛星が安定した姿勢で地上局との通信を実施できていることが確認された(提供:VERTECSチーム)

VERTECSの主な目的は、宇宙初期から現在までに放射された非常に微弱な「宇宙背景放射」を複数の波長帯で観測し、既知の銀河観測だけでは見えてこなかった天体形成史を解明することにある。3度×3度という広い視野で、可視光線の4波長帯(450/550/650/750nm)で観測を行う。

これまでの研究で、近赤外線で観測した宇宙背景放射が、確認されている銀河の光を積算した値よりも数倍明るいことが報告されている。このような超過の起源として、初代星のような宇宙初期の遠方天体と、比較的近い宇宙にある銀河ハロー内の淡い星の集団などが候補として考えられている。これらは近赤外線では似た明るさを示す可能性があり区別が難しいが、可視光線では異なる色やスペクトルを示すと予想されており、VERTECSの観測データが有用な情報をもたらすと期待される。

宇宙背景放射の概念図
(上)宇宙背景放射の概念図。夜空には、太陽系の塵による黄道光、天の川銀河の星や塵の光、銀河外から届く宇宙背景放射が重なっている。(下)近赤外線で報告されている宇宙背景放射の超過と、VERTECSが観測する可視光線波長帯の概念図。起源の候補によって可視光線側のスペクトルが異なるため、超過成分の識別につながる(提供:VERTECSチーム

また、赤外線で全天の撮像観測を行った赤外線天文衛星「あかり」のデータと照合することで、多波長の情報に基づく議論が可能となり、科学成果創出の観点でも「あかり」との相乗効果が期待される。さらに、開発・運用からデータ解析に至るまで、学生を含む幅広い年代の研究人材が活躍していることから、今後の天文衛星開発への足がかりとなることも期待される。

はくちょう座ループ、干潟星雲、北アメリカ星雲
VERTECSの可視光線観測装置による初期観測データから作られた多色合成画像。(a)はくちょう座ループ、(b)干潟星雲、(c)北アメリカ星雲。点源として写る星だけでなく、淡く広がった放射に対しても測光観測が可能であることが示された。画像クリックで表示拡大(提供:VERTECSチーム)