木星探査機「ジュノー」の初期成果:両極の嵐、不均一な磁場
【2017年5月30日 NASA】
NASAの木星探査機「ジュノー」は2011年8月に打ち上げられ、昨年2016年7月4日に木星周回軌道に入った。そして8月27日、木星の渦巻く雲の上空4200kmを飛行し、初の観測データを取得した。初期観測データから、太陽系最大の惑星である木星の、複雑で巨大で荒れ狂った世界という姿が描き出された。
「木星に対する理解を深めるのに役立つ初期成果に興奮しています。木星への旅は長いものでしたが、これらの成果は、その旅が非常に価値あるものだったことを示してくれました」(ジュノー・プログラム・エグゼクティブ Diane Brownさん)。
撮像カメラ「JunoCam」が取得した画像には、密集してこすれ合う地球サイズの渦巻く嵐が木星の両極を覆っている様子が見られる。「このような嵐がどのように形成されるのか、その形状がどれほど安定的なのか、なぜ北極と南極の見た目が違うのかといった疑問に私たちは困惑しています。私たちが目にしているのは変化の一段階で嵐は来年にかけ消失するのか、それとも構造は安定しており嵐はお互いの周りを回っているのかなど、様々な疑問があります」(米・サウスウエスト研究所 Scott Boltonさん)。
木星の特徴の一つである縞模様について、マイクロ波計測器「MWR」が木星大気に浮かぶアンモニアの雲の最上層から大気の奥深くまでを観測し、その帯や縞が謎めいていることを示した。赤道付近の縞は下の深いところまで到達している一方で、他の緯度の帯と縞は別の構造に進化しているようだ。
木星の磁場が太陽系で最も強いことはジュノーの探査以前から知られていたが、磁場計測器「MAG」による磁気圏の観測から、磁場はモデルの予想を上回って強く、不規則な形状であることが示された。「磁場は均一ではなく強弱が見られます。金属水素の層の上にある木星表面に近い領域で起こるダイナモ作用で磁場が発生している可能性を示唆しています」(ジュノー副主任研究員 Jack Connerneyさん)。
また、木星の両極で発生するオーロラの観測結果から、木星と地球とでオーロラ発生のプロセスに違いがあることが示された。
ジュノーは木星の両極の上空を通る軌道を53日周期で飛行している。軌道上の大半は木星からかなり離れた場所を飛行しているが、木星最接近の際には木星の北極上空から南極上空までわずか2時間で飛行し、データの収集やJunoCamによる撮影を行う。
「53日毎に新しい発見があり、私たちは毎回驚きの声をあげています。次の木星フライバイは7月11日で、太陽系内で最も象徴的な模様とも言える大赤斑の上空を飛行します。巨大な渦巻く深紅の雲の下で何が起こっているのか、その真相を究明するのはジュノーと、雲を見通す観測機器でしょう」(Boltonさん)。
〈参照〉
- NASA: A Whole New Jupiter: First Science Results from NASA's Juno Mission
- Science: 論文
- Geophysical Research Letters: Early Results: Juno at Jupiter 論文集
〈関連リンク〉
- ジュノー
- Mission Juno
- アストロアーツ: 【特集】木星とガリレオ衛星(2017年)
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