月の土壌に含まれる水の全球分布図

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月の土壌中に含まれる水の全球分布図が作成された。将来の月探査における水の供給源となり得る場所を示すものである。

【2017年9月20日 Brown University

インドの無人月探査衛星「チャンドラ ヤーン1号(Chandrayaan-1)」が取得したデータをもとにして、米・ブラウン大学のShuai Liさんたちの研究チームが、月面の土壌の最上部に含まれる水の量を示した分布図を作成した。全球的な分布図が作成されたのは初めてのことである。

月面の水の存在量を示した全球図
月面の土壌の最上部から数mmの深さに含まれる水の存在量を色で示した全球図。南北の極に向かうほど水の量が多くなる(存在量を示す色が、紫から青、緑となっている)ことがわかる。黄色い点はアポロ宇宙船の着陸地点(提供:Milliken lab / Brown University)

「水の存在を示す兆候は、これまでに報告されている南北の両極域に限らず、ほぼ月面のどこにでもあります。水の量は両極に向かうほど増え、組成上性質が異なる地形でも大きな違いは見られません」(Liさん)。

水の分布は広範囲で一様であり、濃度は赤道に向かって徐々に低くなるが、この傾向は太陽風と月の土壌との反応で水分子や水酸基(水素原子1個と酸素原子1個の化合物)が作られるという説と一致する。水の大部分が太陽風に起因する可能性がある一方で例外もあり、たとえば赤道付近の火山性堆積物は環境的に水が少ないと考えられるが、実際には水の濃度は平均値より高い。こうした特定の領域に存在する堆積物中の水は、月のマントルの奥深いところから表面に噴出したもののようだ。

さらに研究チームは、緯度が60度より低い領域で水の濃度が早朝と夕方に高く、正午前後には非常に低くなること、その変動幅が200ppmほどであることも発見した。「濃度の変動がどんなメカニズムによるものかは、まだはっきりわかっていません。しかし、月の土壌中における水の形成プロセスが活発であり、現在もそれが起こっていることがわかりました。つまり、抽出後に水が再び蓄積される可能性が高まるわけですが、水が再生される時間的な尺度を知るためには、なぜ形成プロセスが起こり、それがどんな過程なのかに関する物理をよく理解することが必要です」(ブラウン大学 Ralph Millikenさん)。

今回作成された分布図に示された水の存在が、一体どの深さまで続いているのかは定かではない。「私たちが調べたのは土壌の最上部から数mmの深さですから、さらにその下の水の含有量について確かなことは言えません。水の分布を深さ毎に示した場合、存在する水の量に大きな違いがでてくるかもしれません」(Millikenさん)。また、今回の結果は月面で反射された光を計測したデータをもとにしているので、月の両極にあるクレーターの内部のように太陽光が永久に当たらない場所(永久影)の水の量はわからない。

それでも、今回の研究成果は月面の水資源利用を考える上での出発点になる。「水が抽出可能かどうかはまだわかりませんが、少なくとも月面上のどの範囲に利用可能な水が存在するのかは示されました。今後は水を入手するためにどこを目指せば良いか、それが合理的なのかどうかなどを考え始めることができます」(Millikenさん)。