地球に大量の物質と貴金属をもたらした大規模衝突
【2017年12月12日 NASA】
天体衝突は太陽系の進化における重要なポイントと考えられている。地球の月は地球に天体が衝突して誕生したと考えられているが、さらにその後にも地球には多くの天体が降り注いだ。
とくに約41億年前から38億年前までの「後期重爆撃期」と呼ばれる3億年間には、月ほどの大きさの「微惑星」が地球に多く衝突し、この衝突によって大量の金属や岩石を形成する鉱物が地球のマントルと地殻にもたらされたと考えられている。計算から、現在の地球の質量の約0.5%にあたる物質が後期重爆撃期に地球へともたらされたことが示されている。
米・サウスウエスト研究所のSimone Marchiさんたちの研究チームは高解像度の天体衝突シミュレーションにより、衝突した微惑星の核が地球内部へ大きく入り込み地球の核と合体するほど深くまで到達する可能性があることを明らかにした。
シミュレーションでは、鉄と化学的に結合しやすい傾向のあるプラチナやイリジウム、金など特定の微量元素のマントルにおける存在量が、核の形成結果として予測される量に比べて、はるかに多くなった。こうした予測とシミュレーション結果の不一致は、核が完全に形成された後に物質が集積したと考えれば最も簡単に説明することができる。研究チームは、後期重爆撃期に地球にもたらされた物質の量がこれまでに考えられていた量の2~5倍もあったために、衝突によって金のような元素が堆積すると同時に、地球の性質自体も大きく変化することになったと結論づけている。
「これは月形成論だけにとどまらず、広範囲にわたる意味を持つ結果です。大規模な天体衝突が地球に金やプラチナなどの貴金属をもたらす役割を果たしたことが明らかになりました」(Marchiさん)。
〈参照〉
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