第48回 いちばん困る質問
(星ナビ2009年1月号に掲載)
取材などでよく聞かれて答えに困る質問について思うことをお話しします。
ただやりたいことをやってきた
過日放送されたバラエティ番組「踊る!さんま御殿」への出演や、文芸に関する評論の依頼(まったく不得意分野なのですが)雑誌の記事、広告など、最近、プラネタリウムに直接関係ない仕事が少しずつ増えている。文化人として認知されてきているということだろうか。悪くないと思う。僕自身の活動の舞台も拡がるだろうし、プラネタリウムが社会を構成する文化の1ジャンルとして認知を広めていくことにもなるからだ。何より、学生時代からモノ作りや理工系に関心が偏り、プラネタリウムに没頭してきた僕にとっては、異分野の話は新鮮であり、社会への発信であると同時に、僕自身がいろいろな刺激に触れる場でもあると思う。
過日の取材は広告なので、撮影はもちろんスタジオで気合いが入ってたのだが、内容的にもずいぶん長い時間、深く突っ込んだ話となった。インタビュアーがどうやら只者ではなかったようである(最近は、鋭いインタビュアーに会って刺激を受けることが多い。たとえば、日経Associeで取材にいらした小松成美さんなどもそうだった)。自分で何かを追求したり、社会を鋭く観察している人はやはりメガスターひとつとっても、興味の持ち方、質問の内容が違い、こちらのことも調べてきていて、プロとはかくあるものだなと感じた。
それはそれとして、数多くの取材応対や、講演会でのお客さんからの質問を通じ、世間が僕の何に興味や疑問を持っているかがわかってくる。それは、メガスターの性能やその価値といったことより、何より、子どもの頃から続けて今日に至った「継続してきた原動力」のようだ。なぜ続けてこられたのか? 途中で挫折しなかったのか? 飽きなかったのか? 意欲を維持する秘訣は? 重ねて言われることは「普通の人はそれがなかなかできないのだ」ということだ。
しかし、これはじつは僕がいちばん困る質問だったりする。なぜなら、自分でもなぜだかわからないからだ。意欲を維持するために特別に努力したこともなければ、特別に工夫したノウハウがあるわけではない。ただやりたいことをやってきた。少なくとも僕はそう自覚している。もちろん僕にだって中だるみはあるし、壁に突き当たったり意欲が湧かなくなることもある。けれど、意欲を維持するために人に伝授できるようなことは何ひとつとして思い浮かばないのだ。苦し紛れに「他のことで気分転換することもある」、「実現可能な目標しか設定してこなかった」などと答えるのだが、どうも納得してもらえない。「でもなぜ?」、「なぜなの?」。
しまいに、答えに窮した僕は聞きたくなるのだ。「なぜあなたは、ひとつのことに没頭したがたらないのですか?なぜあなたは、日常のきめ細かいことをこなせるのですか?」。
どうやらこれは、言葉で説明したり理解したりできる類のことではない。生まれながらに定められている特質なのではないかという気がしている。