メガスターデイズ 〜大平貴之の天空工房〜

第49回 とびきりのプラネタリウムを低価格で

星ナビ2009年2月号に掲載)

2008年暮れに発表した新機種「メガスターII-B」の位置づけについてです。

なぜメガスターII-Bなのか

本当は前回の続きとなる「自分と他人でできること、できないことの違い」を書くつもりだったのだが、最近、トピックスがあったので今回はそれに触れたい。

去年の暮れ、12月8日に、埼玉県の坂戸児童センターで実施されたあるワークショップでの新型メガスター発表である。

これはJPA(日本プラネタリウム協議会)というプラネタリウム関連団体の枠内で運営されている、デジタルプラネタリウムワークショップという企画の一環で行われたもので、プラネタリウム関係者およそ70名が集結した。今回僕が発表したのは、メガスターII-Bという新機種だった。

メガスターの最近の機種といえば、2008年6月にシカゴのIPS(国際プラネタリウム協会)で発表し、8月に千葉県立現代産業科学館で一般公開されたスーパーメガスターIIを思い浮かべる方も多いと思う。恒星数2200万個を誇る、メガスターシリーズのフラッグシップ機である。そういうものを大々的に発表したわずか半年後に、新たに「メガスターII-B」を登場させた理由について話したい。

数年前、あるプラネタリウム館の懇願に近い依頼を断ったことがある。「高価な大型機を導入する予算はない。メガスターを何とか導入できないものか」という依頼である。このときは、本意ではなかったが断らざるを得なかった。相手の要望に合う投影機の開発が間に合わなかったのだ。当時、愛知万博のほか、日本橋HD-DVDプラネタリウムや熊本で開催されたみらい九州こども博などの大型イベントが続き、スタッフの数も少ない中でイベント実行や番組制作等に忙殺され、とても対応できる状態ではなかった。

しかしそれから数年。まだまだ少人数だがスタッフも増え、製品開発も着々と進んできた。その成果のひとつが、メガスターZEROであり、今回発表したメガスターII-Bである。

メガスターII-Bは必ずしもシリーズ最高性能ではない。恒星数500万個は、それだけを比べればスーパーメガスターIIの前には幾分かすんで見えるかもしれない。しかしII-Bの重要なところは科学館に設置可能ということだ。元来メガスターシリーズが必ずしも得意としてこなかった学習投影への対応。そしてLEDを採用したことによるメンテナンスの軽減。こうした地味なポイントこそが重要だった。

僕には夢がいくつかある。自分なりの最高の機器を最高の状態で上映できる大型の直営館を作りたい。世界中の人にメガスターを見てもらえるようにしたい。しかしそれだけではない。老朽化、予算縮小の中で、活路を見出せなくなっている館に光を点したい。低価格で扱いやすく、星空のとびきり美しいプラネタリウムを提供したい。地味かもしれないけれど、とても大切なことである。

ここ数年のプラネタリウムブームとされた時代。その渦中に身をおきながら、ブームの波の影で、予算不足に悩む館が多数あることを何度も聞かされた。今回発表したII-Bは、きっとその夢をかなえてくれるきっかけになると思う。

メガスターII-B

10〜15mの中型ドーム向けに開発されたメガスターII-B。主光源は超高輝度LEDで、メンテナンスの軽減が特徴。