天王星の衛星一個の確認取り消し

【2002 年 1 月 10 日 国立天文台天文ニュース (512)

国際天文学連合(IAU)は、天王星のひとつの衛星に対して、存在の確認を取り消しました。これで、天王星に公式に確認された衛星数は20個になりました。

これまでに、天王星には21個の衛星が認められていました。今回取り消しになったのは、その中で S/1986 U10 という認識符号が付けられていたものです。この衛星は、アリゾナ大学、月惑星研究所のカルコシュカ(Karkoschka,E.)が1999年に発見したものでした。カルコシュカは、宇宙探査機ボイジャー2号が1986年に天王星に接近して撮影した300枚の画像を詳細に検討し、そのうちの7枚からこの衛星を検出したのでした(天文ニュース260)。発見されたときは天王星の18番目の衛星で、直径は40キロメートルと推定されました。

しかし、この衛星はボイジャー2号の観測直後に気付かれたものではなく、13年後にやっと発見されたものであり、存在がそれほど明確にわかるものではなかったこと、その後のカベラーズ(Kavelaars,J.J.)たちの詳細な観測などでも確認できなかったことなどの理由で存在が疑問視され、今回、確認の取り消しに至ったものです。ただしこれは、「存在しないことが確実だ」というのではなく、「いまのところ確認できない」という意味です。今後に予定されている、ハッブル宇宙望遠鏡による天王星の観測などでその存在がわかれば、再び衛星として確認される可能性は残されています。

この結果、現在太陽系の惑星に確認されている衛星の数は、地球に1、火星に2、木星に28、土星に30、天王星に20、海王星に8、冥王星に1、合計90個になりました。このほか小惑星にも、かなりの数の衛星が存在することがわかっています。また天王星の衛星はすべて命名されていて、エアリエル(Ariel)、アンブリエル(Umbriel)、ティタニア(Titania)、オベロン(Oberon)、ミランダ(Miranda)、コーデイリア(Cordelia)、オフィーリア(Ophelia)、ビアンカ(Bianca)、クレシダ(Cressida)、デスデモーナ(Desdemona)、ジュリエット(Juliet)、ポーシャ(Portia)、ロザリンド(Rosalind)、ベリンダ(Belinda)、パック(Puck)、キャリバン(Caliban)、シコラックス(Sycorax)、プロスペロー(Prospero)、セティボス(Setebos)、ステファーノ(Stephano)の20個となっています。