ハッブルがとらえた、もっとも遠い銀河
【2009年12月18日 Oxford University】
ハッブル宇宙望遠鏡(HST)は「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド」と呼ばれる超遠方の宇宙まで見通せる領域を赤外線で撮影した。そこに写った無数の銀河の中には、ビッグバンから10億年たらずの宇宙で生まれたと思われるものもある。
英・オックスフォード大学のAndrew Bunker氏とエジンバラ大学のJim Dunlop氏らによる分析で、HSTの広視野カメラ3(WFC3)が撮影した赤外線画像に、ビッグバンから10億年たらずという遠方に存在すると思われる銀河が見つかった。WFC3は、今年5月の有人修理ミッションでハッブル宇宙望遠鏡に取り付けられたカメラである。
撮影されたのは、ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールドと呼ばれる南天の一角だ。銀河系内の天体のような視界をさえぎるものがないため、ひじょうに遠い場所まで見通すことができる。HSTが5年前にこの領域を可視光で撮影しているが、今回は赤外線で撮影したことで、いっそう遠くの宇宙を見ることができた。
オックスフォード大学のStephen Wilkin氏は「宇宙の膨張によって、遠方の銀河からの光は、より赤く見えます。赤外線に高い感度を持つHSTの新しいカメラは、以前よりはるかに遠い銀河をとらえることができます」と話す。
画像の中には宇宙が現在の年齢の5パーセントだったころ、つまりビッグバンから10億年たらずの宇宙に存在した銀河も写っているという。新しい天体が見つかったことで、新たな疑問が提起された。Bunker氏は、次のように説明している。「初期宇宙では、銀河の間を満たしていたガスが光であぶられて電離していたことがわかっています。しかし、今回観測された銀河からの光では、電離を起こすにはじゅうぶんではないかもしれません」
「今回の一連の観測は、HSTが撮影した画像としてはもっとも感度の高いものとなるでしょう。これらの遠方銀河をより詳しく調べるのは、2014年に打ち上げられるHSTの後継機ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の役割です」とDunlop氏は話している。