小口径の望遠鏡で地上から系外惑星の撮像に成功!

【2010年4月22日 JPL

ヘール望遠鏡の一部を使った観測で、地球から120光年離れた系外惑星が撮像された。使用されたのは真ん中の口径1.5m分で、これほど小さい口径で地上から系外惑星が撮像されたのは初めてのことだ。


(1.5mヘール望遠鏡を使って撮像された系外惑星HR 8799a、HR 8799b、HR 8799cの画像)

1.5mヘール望遠鏡を使って撮像された系外惑星HR 8799a、HR 8799b、HR 8799c(×は中心星)。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/Palomar Observatory)

ペガスス座の方向約120光年の距離に位置する恒星「HR 8799」のまわりには、2008年11月に3つの惑星が発見された。惑星はいずれも木星より大きなガス惑星と考えられており、それぞれ太陽〜地球間の24倍、38倍、68倍離れたところを回っている(太陽〜木星は太陽〜地球間の約5倍)。

また、中心星であるHR 8799の質量は太陽よりわずかに大きい程度で、年齢は太陽の46億歳に比べてはるかに若い6000万歳である。NASAの赤外線天文衛星スピッツァーによる最近の観測で、この惑星系ではまだ天体どうしの衝突が起きており、細かいちりがばら撒かれていることがわかっている。

3つの惑星は、これまでにケック天文台の口径10m望遠鏡や口径8mのジェミニ北望遠鏡などの大口径望遠鏡によって撮像されたことがあったが、NASAのジェット推進研究所の研究チームは、それよりもずっと口径の小さい望遠鏡を使って撮像に成功した。

撮像に使われたのは、パロマー天文台のヘール望遠鏡だ。ヘール望遠鏡は約5mの口径を持つが、その中心の1.5m分のみが用いられた。また、撮像は従来と同じ赤外線の波長で行われた。研究チームでは、補償光学とコロナグラフという2つの技術を合わせることで、中心星からの光を最小限に抑え、中心星に比べてはるかにかすかな惑星からのぼんやりとした光をとらえたのである。

補償光学とは、大気によるゆらぎ(星のまたたき)を取り除くことができる方法である。研究チームではこの補償光学に加え、特殊なコロナグラフを使うことで、中心星からの光を選択的に遮り、惑星の明るさをそこなわない観測を行うことができた。なお、観測に使用されたコロナグラフは、研究チームの一人で、NASAのジェット推進研究所のDimitri Mawet氏が開発したものである。

この手法を使えば、中心星からの見かけの距離がきわめて近い領域(おそらく角度1度の1万分の1程度)でも撮像が可能で、その威力は、口径が5倍から7倍も大きい望遠鏡に相当する。この手法は、とくに宇宙望遠鏡を使って系外惑星を探す場合に有効となる。大口径の望遠鏡を打ち上げるのは難しいため、小口径の望遠鏡でも惑星を発見できるような手法が必要なのだ。

研究発表者の一人で、ジェット推進研究所の天文物理学者(および米・カリフォルニア工科大学 物理学科の客員研究員)のGene Serabyn氏は「わたしたちが用いた手法は、もっと大きな地上の望遠鏡を使った場合でも、中心星にかなり近い距離にある惑星を撮像できるはずです。また、小さな望遠鏡を使って、明るい中心星に近い領域に地球のような小さな惑星探しをする場合にも使えるかもしれません」と話している。

ジェット推進研究所で系外惑星探査プログラムの主任研究員を務めるWesley Traub氏は「このような技術が、わたしたちを地球に似た別の惑星へと導いてくれるのかもしれません。わたしたちは、宇宙に浮かぶ、かすかな青い点をとらえる日に向かって近づきつつあります」と話している。

ステラナビゲータ Ver.8で系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータでは、HR 8799a、b、cが存在する方向を星図に表示させることができます。惑星の存在が確認された350個以上の恒星の位置を、追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータ(Ver.8以降)をご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。

なお、惑星HR 8799a、b、cが存在する恒星には「HR 8799」だけではなく、さまざまな呼び方があります。「コンテンツ・ライブラリ」からダウンロードできるデータには、「V342 Peg」として登録されています。