探査機ロゼッタがとらえた小惑星ルテティアのクローズアップ

【2010年7月13日 ESA

日本時間11日、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の彗星探査機ロゼッタが小惑星ルテティアへ最接近し、3162kmの距離から撮影した小惑星のクローズアップ画像が公開された。


(小惑星ルテティアの画像)

小惑星ルテティア。クリックで拡大(提供:ESA 2010 MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/RSSD/INTA/UPM/DASP/IDA、以下同様)

(小惑星ルテティアの表面にある巨大なくぼみのクローズアップ画像)

小惑星ルテティアの表面にある巨大なくぼみのクローズアップ。クリックで拡大

(小惑星ルテティアと背景に写る土星の画像)

小惑星ルテティアと背景に写る土星。クリックで拡大

中央ヨーロッパ夏時間7月10日の18時10分(日本時間の11日1時10分)、彗星探査機ロゼッタが小惑星ルテティア((21)Lutetia)へ最接近し、約45億年の歴史を物語るような多数のクレーターが残る表面や横長の全体像をとらえた。表面にある巨大なくぼみのクローズアップ画像も公開されている。

公開された複数の画像は、ロゼッタが秒速約15kmで小惑星に接近・通過した直後に地球へ送信されたものである。撮影観測から、ルテティアの幅は、もっとも長いところで130kmあることも明らかになった。

独・マックスプランク天文学研究所の太陽系研究所で、OSIRISカメラの主任研究員をつとめるHolger Sierks氏は、「これは、とても古い天体だと思います。わたしたちは、太陽系形成時の残骸の1つを見ているのです」と話している。

ロゼッタは最接近時に、一連の機器をフル稼働させ、ひじょうに薄い大気や磁場の影響の有無、表面の組成や小惑星の密度なども調べた。また、小惑星付近に浮遊していたちりの粒子をとらえることも試みており、探査機上で分析が行われる。

実は、ルテティアはどのタイプに分類されるべきかわかっていない、謎の小惑星だ。地上に設置された望遠鏡による観測では、太陽系形成時の生き残りと言える原始的なC型の小惑星とみられる一方で、鉄などを主な成分とするM型のような特徴があることもわかっている。M型は、小惑星よりずっと大きな天体の核の破片の一部だと考えられている。ロゼッタが得た最新画像とデータによって、これまで遠く離れたところにある見知らぬ謎の天体だったルテティアの正体が明らかにされ、わたしたちにとって身近な天体の1つとなるだろう。

なお、ロゼッタは、ルテティアへの最接近という重要な目的の1つを果たした後も旅を続ける。次に目指すのは、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)である。2014年に到着し、数か月間にわたって彗星を追跡しながら観測を行う。その際には「フィラエ(Philae)」と呼ばれる着陸機が本機から放出されて彗星の核に降り立ち、9つの搭載機器を使った観測が予定されている。