太陽の黒点が消えた2年間の理由
【2011年3月4日 NASA】
2008〜2009年に太陽の黒点がほとんど現れなかったのは「1990年代後半に太陽のループ状プラズマ流のスピードが速まった時期があったせいでは」とする研究結果が発表された。
太陽には表面付近と内部を行き来するループ状コンベアベルトのプラズマ流が存在する(1枚目の画像)。表面に現れて時間が経過し勢いの衰えた磁場がコンベアベルトにのって極付近で内部にもぐりこみ、表面下30万kmで磁気ダイナモにより再び勢いを得て赤道付近の表面に現れる。これが太陽の活動1サイクルとなる。
太陽の活動周期は通常およそ11年だが、第23活動周期(注)が終わって活動が底を打ったはずの2008年をすぎても太陽はなかなか活発化に向かわず、それから2年にわたって黒点はほぼ消え、磁場も弱まっていた(2枚目の画像)。
磁場が弱まり太陽風が収まることは、さまざまな弊害がある。太陽風という妨げのなくなった太陽系外からの宇宙線の量が増加し、宇宙はより危険な空間になる。また、黒点からの紫外線放射が少なくなることで地球の大気圏が冷えて収縮し、宇宙デブリが大気抵抗で落ちることなく軌道上に蓄積されてしまうのだ。
インド科学教育研究機関カルカッタ(IISER-Kolkata)のDibyendu Nandi氏らのシミュレーションによれば、第23活動周期の上昇期にあたる1990年代の終わりごろにプラズマ流の流れが速まっており、そのため磁場が内部でじゅうぶん「充電」する時間がなかったと見られる。さらに、「充電不足」の磁場が表面に現れる2000年代になって高速化していたプラズマ流が元通りスローダウンしたことで、黒点のない磁場が表面にとどまる時間が長くなり、第24周期の開始が遅れた、というのだ。
シミュレーション結果は、黒点の減少だけではなく磁場の衰えともつじつまが合うもので、シミュレーションモデルの妥当性はじゅうぶんという確証も得られた。今後、観測で得られるプラズマ流の動きをこのモデルに組み込んでさらにシミュレーションを行うことで、極小期の予測や解明が進むと期待される。
長らく低迷していた太陽活動だが、今年2月14日には数年ぶりの大規模フレアが起き、大きな黒点も見られるようになっている。新しい極大期に向けいよいよ本格的に活発化してきたのかも知れない。
注:「第23活動周期」 太陽の活動周期は、1755年に始まった周期を「第1」として、それぞれ番号が振られている。