太陽活動周期は、ループ状のプラズマ流の影響で長引いた?
【2010年8月20日 NCAR & UCAR】
2008年に終わった太陽の活動周期は、従来よりも長かった。その理由の1つとして、太陽の赤道と極の間を循環するプラズマのループ状の流れが通常より長く伸びたためであったと発表された。この成果は、太陽の活動サイクルの予測などに役立つかもしれないと期待されている。
太陽の活動は約11年周期で、黒点のもっとも多い時期を活動極大期、少ない時を活動極小期という。1つの周期は、ある極小期から次の極小期までと定義されている。極大期には、磁気活動が活発化し、黒点のほか太陽フレアなども多く発生する。活動の度合いによっては、地球上のGPSや通信システムなどに影響を及ぼす。
太陽活動周期には番号が付けられている。2008年に終わった「活動サイクル23」は、これまでの周期に比べて低活動の状態が長く続いた。しかし、その理由の説明は見つかっていなかった。
米・国立大気研究センター(NCAR)の高高度天文台の研究者とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者からなるチームはデータを分析し、周期が長引いた原因の1つとして、太陽で起きているプラズマの循環に見られた変化を挙げた。
たとえば地球上では、海流の循環(海洋コンベアベルト)によって水や熱が地球全体に運ばれている。太陽でもプラズマの流れの中で循環が起きており、磁力線の集まりである磁束は赤道から極に流れて、再び赤道へと戻ってきている。
研究チームの一員Dikpati氏は次のように述べている。「活動サイクル23が長引いた理由と、わたしたちの行ったプラズマの運動に関する計算モデルの示す結果とを説明する鍵は、太陽のプラズマ・コンベアベルトに異常が観測された点にあります。コンベアベルト理論は、活動サイクル22の時のように、ベルトがより短い方(右画像2枚目中、左側)が普通の状態であることを示しています」
これまでの活動サイクルでは、ループ状のプラズマ・コンベアベルトは、緯度約60度のあたりで赤道に向かって引き返していた。しかし、最近集められたデータの分析によると、活動サイクル23ではプラズマ・コンベアベルトが極にまで伸びていたことが示されたのである。そのため活動サイクル23では、流れが赤道に向かって戻ってくるのも従来に比べて遅かった。
Dikpati氏らは、プラズマ・コンベアベルトがどのように太陽の活動周期に影響を及ぼしているのかを調べるためにコンピュータ・シミュレーションを行った。その結果からも、プラズマ・コンベアベルトが長く伸びて赤道に戻るのが遅くなり、活動サイクル23に影響を及ぼした可能性が示された。
研究チームの一員で、米・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のRoger Ulrich氏は「太陽の活動サイクルの予測を向上させるため、また広い範囲におけるプラズマの動き方の理解が進むよう、更なる努力が必要です」と話している。