木星の衛星イオにマグマ層が存在

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【2011年5月16日 NASA

活火山を持つ木星の衛星イオの地表下にマグマ層が存在することがわかった。2003年に観測を終了した木星探査機「ガリレオ」のデータをもとにした新しい研究により判明したものだ。


(「ガリレオ」が撮影したイオの火山の画像)

探査機「ガリレオ」が1998年3月に撮影したイオの火山。左縁が「ピラン・パテラ(Pillan Patera)」(拡大画像上)は噴煙が140km上空まで広がっている。中央部、昼夜境界付近の「プロメテウス(Prometheus)」(拡大画像下)の噴煙は70km上空までおよび、右方向に流れている。クリックで拡大(提供:NASA/JPL)

(木星磁場とイオの内部の概略図)

木星磁場の磁力線と衛星イオの内部の概略図。地殻(灰色)の内側にマグマ層(オレンジ色)が存在する。アニメーション動画では、木星の自転により磁場が変化してもマグマ層によりイオ内部の磁場の向きは保たれる様子を見ることができる。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/University of Michigan/UCLA)

木星の衛星イオは、ボイジャー計画による1979年の探査以来、地球以外で唯一活火山を持つ天体として知られている。イオの火山から年間に流出する熔岩の量は地球全体のおよそ100倍もある。環太平洋火山帯に火山が集中する地球とは違い、表面全体に火山が分布しているが、イオの地殻下30〜50kmの深さにマグマ層が存在しているとすれば説明がつきやすい。

1989年に打ち上げられた探査機「ガリレオ」は1995年から木星を周回して観測を開始した。イオのそばを通り過ぎた1999年10月と2000年2月の磁場データに不思議な変化が表れていたが、「ガリレオ運用当時は、木星の磁場がイオにどのように影響しているかの理論が確立されておらず、イオの内部で何が起こっているのかよくわからなかった」(研究チームのXianzhe Jia氏。米・ミシガン大学所属)という。その後ガリレオは2003年に観測を終了している。

だが、鉱物に関する最近の発見がこの謎を解くカギとなった。「超苦鉄質」と呼ばれる性質を持つ岩石が溶けた際に、電流が通りやすくなることがわかったのだ。これはマグマが冷えてできる火成岩の一種で、地球では地下深くのマントル由来のものと考えられている。

Jia氏らミシガン大学、カリフォルニア大学の研究チームはこれをふまえ、磁場データの変化は超苦鉄質のマグマ層によるものかどうか検証したところ、「複輝石かんらん岩」と呼ばれる岩石が存在する場合とデータが一致したのである。イオのマグマ層は50kmもの厚さがあり、その温度は1200度を超えるということもわかった。

「地球や月ができたばかりの頃は、イオのマグマ層と同じような熔岩の海(マグマオーシャン)が存在し、次第に冷えて固まったと考えられています。したがって、イオの火山活動を知ることは地球と月の形成時の火山活動を知ることにつながるのです」(「ガリレオ」の元プロジェクトサイエンティストTorrence Johnson氏)。