ニューホライズンズによる木星画像:イオの噴火と細いリング
【2007年3月12日 New Horizons Mission Photos(1) / (2)】
2月末に木星スイングバイを果たしたNASAの海王星以遠天体探査機ニューホライズンズ。数日間の「シャッターチャンス」のうちに撮影された画像は、今も探査機から送信され続けている。その中で、木星をとりまく衛星やリングを鮮明にとらえた写真を紹介しよう。
高さ数十キロメートルの噴水やスプリンクラー 衛星イオの活火山
木星最接近を果たした直後の2月28日午前11時(世界時)、ニューホライズンズは約250万キロメートルの距離から衛星イオ(解説参照)を撮影し、この画像を地球へ送ってきた。もっとも目を引くのは、画像上側でスプリンクラーのように物質が吹き出しているようすだろう。これはトゥヴァーシュター(Tvashtar)と呼ばれる火山の噴火だ。噴出物は上空290キロメートルの高さにまで達している。
画像の左側には、プロメテウス(Prometheus)火山が60キロメートルもの高さにまで噴出物を飛ばし、噴水のように広がっているようすが写っている。さらに、画像下方の夜側に注目すると、もう一つの火山、マスビ(Masubi)が白く写っている。太陽光を浴びるほどの高さまで、噴出物が到達しているのだ。
木星のすぐ近くを回るイオの内部は、木星の強力な重力を受けて伸び縮みを繰り返し、エネルギーを生み出している。そのおかげで、表面では数百の火山が噴火活動を続けている。噴出物は、おもに硫黄だ。専門家によれば、トゥヴァーシュターの噴火によって宇宙空間まで飛び散ったガスやちりは、粒状に凍りついているかもしれない。「火山から雪が吹き出している」というわけだ。
細いリングには衛星の足跡が残されているかもしれない
一方、こちらは2月24日に710万キロメートルの距離からとらえた木星のリング(環)である。これまででもっとも鮮明に写し出された環は、予想以上に狭かった。環のすぐ外側には衛星アドラステアとメティスが存在し、「羊飼い」のように物質を内側に押し戻す役割を果たしているのかもしれない。
また環の内側は空隙のように暗くなっていて、未知の衛星が通っていることを示唆させる。「環の中に衛星が存在するのなら、ニューホライズンズが今後数週間の間に地球へ届けてくれる数百枚の写真の中から見つかると思います」と望遠撮像装置LORRIの主任研究者Andy Cheng博士は語っている。
イオ
イオは、ガリレオ衛星の中で、もっとも内側を回っている衛星です。半径は、地球の月よりやや小さい程度です。火山が多く、溶岩は地球の岩石とは異なり硫黄です。活発な火山活動で流れ出す溶岩のために、地表はつねに変化し、クレーターは見られません。(「太陽系ビジュアルブック」より抜粋)