「メッセンジャー」が捉えた様々な水星の「正体」
【2011年6月21日 NASA】
NASAの水星探査機「メッセンジャー」が水星周回軌道に入って3ヶ月が経った。先日発表された水星の表面地形、化学組成、磁場構造などに関する様々な成果を紹介しよう。
2011年3月に水星周回軌道への投入に成功した探査機「メッセンジャー」は4月はじめより科学観測を行っている。今回、その結果の一部として「水星表面の詳細な構造」「水星表面の化学組成」「水星全体の表面地形と磁場構造」の3項目について発表があった。
水星表面の詳細な構造
水星のクレーターの底には明るい物質がぽつぽつと存在していることが確認されていたが、これまでの低解像度の画像ではその正体はよくわかっていなかった。今回、1ピクセル当たり10mという高解像度の画像でよく見てみると、この明るいものの正体は直径数百mから数kmにも及ぶ「穴」であった。穴の周りを反射率の高い物質が取り囲んでいたために、その部分が明るく光って見えていたようだ。このような「穴」はクレーターの底だけでなく、クレーターの中央丘やそれを取り巻くリング状地形、クレーターの縁にも存在していた。
このような地形は月や金星にも見られず、正体はまだよくわかっていない。クレーターの中に見られることから、この地形は比較的若いものと見られ、揮発性物質が水星の地殻には多く含まれていることを示していると考えられる。
水星の化学組成
メッセンジャーにはX線分光器(XRS)が搭載されており、化学組成を調べることができる。これを用いて水星表面のケイ素に対するマグネシウム、アルミニウム、カルシウムの量を調べたところ、水星は月のように長石で覆われておらず、どちらかといえば地球に近い組成をしていることがわかった。
また、水星表面には硫化鉱物が多く見られた。水星は地球ほど酸化的な環境でなかったことを示しており、今後水星の火山活動を考える上で重要な情報となりそうである考えられる。
水星全体の表面地形と磁場構造
メッセンジャーに搭載されたレーザー高度計を用いて水星の北半球について調べたところ、北極域では高度が低く、それ以外のところでは標高9000mを超えていることがわかった。また、地球からのレーダー観測によって水星の極域の永久影(1年を通して太陽の光が全く当たらない領域)に水の氷が存在している可能性が指摘されていたが、北極近くのクレーターの深さを測定したところ、永久影が存在するようなクレーターがあってもおかしくないことがわかった。
1974年から1975年にかけて「マリナー10号」が水星に接近した際に、地球の磁気圏でよく見られるような、電気を帯びた粒子の噴出現象が4回観測されていた。2008年から2009年にかけてのメッセンジャーによる水星接近時にはこの現象が見られず、研究者を悩ませていたが、このような噴出現象が定期的に起きていることが周回軌道に投入された後の観測によって確認された。
メッセンジャーは現在最初の近日点通過を終えたところであり、科学探査をあと9ヶ月行う予定となっている。
メッセンジャーの位置と航路
天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、メッセンジャーやパイオニア10号、「はやぶさ」など、主な探査機15機の設定日時における位置や航路を表示することができます。