エンケラドスの氷から「塩」を発見、液体の水の存在を示唆
【2011年6月28日 NASA】
NASAの土星探査機「カッシーニ」が衛星エンケラドスから噴き出している氷の成分を調べたところ、地球の海水のようにナトリウムやカリウムが多く含まれていることがわかった。エンケラドスの内部に液体の水が存在している可能性を示す発見だ。
土星の衛星エンケラドスは水の存在が確認されており、もしかしたら生命がいるかもしれないと考えられている天体である。南極付近にある「タイガーストライプ(虎縞)」からは水蒸気や氷が噴き出しているが、その氷は液体の水が噴出して氷になったものか、それとも元々氷として存在していたものが噴出しているのか議論が続いていた。
この氷の成分を「カッシーニ」がダスト分析器を用いて調べたところ、エンケラドスから遠いところでは粒子の大きさが小さく塩分が少なかったが、エンケラドスに近いところでは粒子の大きさが大きく、地球の海水と同様にナトリウムやカリウムといった「塩」の成分が多く含まれていることがわかった。
もし、元々氷として存在していた水が噴き出している場合は、塩分は氷ができる際に取り除かれてしまっているため、多く含まれることはなく、この分析結果を説明することは難しい。一方、液体の塩水が噴き出して瞬時に凍った場合には塩分も閉じ込められるため、今回の結果はエンケラドスの内部に液体の水が存在している可能性が高いことを示している。
この塩分はおそらく、深さ約80kmにある氷マントルと岩石コアの間に液体の水の層があり、岩石に含まれる成分が溶け出すことで供給されていると考えられる。そして、表面の割れ目が開いたり細い道から超高速で噴き出したりして宇宙空間に放出されていると考えられる。
紫外線を用いた観測ではエンケラドスから放出される水蒸気が音速の5〜8倍もの速度で噴き出していることが確認されており、これは液体が細い道を通って超高速で噴き出すモデルとよく一致している。また、エンケラドスの噴出物で構成されていると考えられる土星のE環にも塩が見つかっているため、今回の発見は液体の水がエンケラドスに存在することを示しただけではなく、土星の環の起源についても強い関連を示したことになる。