アンドロメダ座大銀河とパンスターズ彗星が接近中
【2013年4月3日 アストロアーツ】
4月上旬、パンスターズ彗星とアンドロメダ座大銀河(M31)が接近中だ。4〜5日にかけてが最接近となる。双眼鏡やカメラ撮影で狙ってみよう。「星ナビ」5月号(5日発売)のパンスターズ特集からの先取り記事も紹介。
日没後の北西の空と明け方の北東の空に見えているパンスターズ彗星(C/2011 L4)が、4月上旬にアンドロメダ座大銀河(M31)と見かけ上接近し、双眼鏡の同じ視野内で見られる。
両天体が数字上もっとも近づくのは4月5日午前1時半(日本時間)ごろ(角距離2.3度)だが、4日に2.4度、6日は2.5度、7日は3.3度(いずれも未明)と、しばらく接近を楽しめる。北海道地方では午前2時前から北東の低空ぎりぎりに現れており、空が明るくなるまで余裕を持って観測することができる。
月刊「星ナビ」では4月号(イラスト)、5月号と連続でパンスターズ彗星が表紙になっているので、パンスターズ彗星とM31の2ショットで6月号の表紙を狙ってみてはいかがだろう。特に明け方の位置関係は縦構図で表紙の配置になじみやすい。「星ナビ」ロゴが入ることを考慮に入れるのもコツだ。
web投稿ギャラリーでも、すでにいくつか素晴しい画像をいただいている。
- 投稿画像ギャラリー: 特集:2013年4月上旬 アンドロメダ座大銀河とパンスターズ彗星の接近
- Spaceweather.com: ロシア連邦・コミ共和国のSmilyk Pavelさんが撮影した彗星とM31
夕空に現れた1等級の大彗星
(※)以下は4月5日発売「星ナビ」2013年5月号(執筆:吉田誠一さん)からの抜粋です。
「星ナビ」3月号では「光度上昇が鈍り、最大でも3等級にしかならない」と悲観していた。だが、パンスターズ彗星は最後の最後になってひと頑張りしてくれた。2月下旬までは増光が鈍いままだったが、2月末になると南半球の観測者から「予想以上に明るい」という報告が届くようになった。最接近まで2週間を切った間際になって急激に増光のペースを速めたようだ。そして、ついに、1等級の大彗星として日本の空に姿を現した。
日本で初めて彗星の検出が報告されたのは3月8日。以降日本各地から「見えた」「写った」という報告が続々と寄せられるようになった。3月中旬は低空までよく晴れた日も多かったこともあり、多くの人が目にし、写真に捉えることができた。記憶に残る「歴史的な大彗星」とまでは言えなくても、薄明の残る明るい空にキラリと輝く1等級の彗星は十分に楽しめた。
パンスターズ彗星の特徴はひじょうに集光が強かったことだ。中心部は恒星のように輝いていて、低空にもかかわらず写真にはしっかりと写ってくれた。双眼鏡を使うと、意外にも見つけやすかったと感じた人もいるかもしれない。
パンスターズ彗星の明るさは、人によってだいぶ印象が違っていた。「0等級の大彗星」「2等級にしか見えない」と意見が分かれた。これは、低空の大気の影響を強く受けたためである。低空の星は上空にある時よりも暗く見える。だが、どのくらい影響を受けていて本当はどれほどの明るさなのか正確に求めることは難しい。経験豊富な観測者どうしでも明るさに大きな誤差が生じてしまうのだ。平均すると、パンスターズ彗星の最大光度は1等級だったようだ。
3月の強く輝いた姿からすると、太陽から遠ざかり始めても急激に暗くなってしまうとは考えにくい。パンスターズ彗星は4月半ばに地球軌道の外側に出るが、その後もほぼ予報どおりにゆっくりと暗くなっていくだろう。4月中は5〜6等級の明るさを保ち、大型連休のころにも7等級で見える。5月下旬には8等級になるが、地球がパンスターズ彗星の軌道面を通過するため、ダストの尾が濃く見えるチャンスとなる。双眼鏡で見るにしても、写真を撮るにしても、長いあいだ彗星を楽しむことができる。
その後もパンスターズ彗星は、日本からは条件良く観測できる状況が長く続く。6月には9等級、7月には10等級、8月には11等級と暗くなっていくが、自分の機材でいつまで観測できるか限界に挑戦してみても面白そうだ。ずっと見ていれば愛着も湧き、思い出に残る彗星となるだろう。
今年最大の注目株・アイソン彗星が来るまでは、まだ少し時間がある。それまで、太陽系の彼方に去り行くパンスターズ彗星を存分に味わってほしい。