アルマ望遠鏡、日本開発の受信機で初の天体画像を撮影
【2013年6月28日 アルマ望遠鏡】
日本が開発した受信機を用いたアルマ望遠鏡の試験観測が今年1月に行われ、400光年彼方の赤ちゃん星を取り巻くガスからの電波をとらえることに成功した。
南米チリのアルマ電波望遠鏡では、観測する電波を10の周波数帯(バンド)に分けて受信するが、日本はそのうちバンド4(受信周波数 125〜163 GHz)、バンド8(385〜500 GHz)、バンド10(787〜950 GHz)という3つの周波数帯の受信機を開発している。
今年1月に実施されたバンド4受信機の試験観測では、日本が開発した直径7mアンテナ6台で、へびつかい座の方向約400光年にある原始星(赤ちゃん星)「IRAS 16293-2422」が観測された。
生まれたばかりのこの原始星の周囲には、星が生まれるもととなった大量のガスが取り巻いている。観測では、そのガスに含まれる硫化水素分子が放射する周波数147GHzの電波をとらえている。硫化水素分子は、ガスの密度が高いところで強く電波を出すため、生まれたばかりの星のすぐ近くにあってこれから星に取り込まれていくガスの様子を観測するのに適しているのだ。
このほかバンド4受信機の観測周波数帯では、低温の星形成領域に多く分布するホルムアルデヒドや重水素化合物、複数の炭素原子が一直線につながった炭素鎖分子などからの電波をとらえることができる。
国立天文台先端技術センターでバンド4受信機開発チームリーダーを務める鵜澤佳徳(うざわよりのり)准教授は、「私たちが作り上げてきたバンド4受信機で初めて天体の電波画像を撮影することに成功したことを聞き、とてもうれしく思います。開発には数多くの技術的課題がありましたが、チーム一丸となって課題をひとつひとつクリアすることでここまでたどり着くことができました。世界の天文学者がこの受信機を使って宇宙の謎を解いてくれることを期待しています」と述べている。