14日の未明、金星が月に隠されまた現れる「金星食」を全国で見ることができます。
金星食を見る
太陽が隠れる→日食 金星が隠れる→金星食
月が太陽を隠すことを日食と言うが、月が星を隠すこともある。これを「星食」と呼んでいる。とくに惑星を隠す惑星食は珍しい現象であり、見る者を魅了する。その惑星食を、今年は2回も日本で見ることができる。1回目が7月15日に起こった白昼の木星食、2回目が8月14日、東の空に昇ったばかりの金星が月に隠される「金星食」だ。今回は、2003年5月29日の白昼に起こって以来、実に9年ぶりの現象となる。
細い月から現れるヴィーナスの宝石
まだ空が暗い時間帯での現象なので、肉眼でも潜入と出現のようすはわかる。沖縄本島北部では、金星が月の南縁をかすめることになり、月の山に隠されて金星が明滅するようすが見られるかもしれない。
月の背後に隠れる直前と出てきた直後は、金星がまるで細い月から滴り落ちる雫か、イヤリングのように見えて、感動的な美しさだ。双眼鏡で見るとその感動はいっそう大きくなるだろう。また望遠鏡なら半月状に欠けた金星が、ジワジワ月に吸い込まれてゆくようすや、地球照でぼんやり光る月の背後から、まぶしすぎるほどの金星が、輝く宝石のように出てくるようすを楽しむことができる。
未明の東の空で
東京では、2時43分に東の空に昇って間もない半月状の金星が、月の明るく輝く側から1分ほどかけて月の後ろに隠れていく。そして3時28分から1分半ほどかけて月の影になっている部分から姿を見せる。金星が月の後ろに隠れるときの高度は、全国的に10度前後と低いので、観望は東の空が地平線まで開けたところを事前に探しておこう。金星が姿を見せるころには、月の高度は20度ほどになっている。
写真ギャラリー
1989年12月2日の金星食。今回とは異なり夕空での現象だった。月の縁から金星が現れたところ。クリックで拡大(撮影:大熊正美)
写真では月の明るい部分が露出オーバーになっているが、目で見ると明るい部分、月の暗いほうがボンヤリと光って見える地球照、金星がよいバランスで見えるだろう。クリックで拡大(撮影:大熊正美)
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で金星食をシミュレーション
金星食のような天体現象は、観測地の緯度経度が少し変わるだけで見え方が違ってきます。天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」を使って、指定した観測場所での見え方を正確にシミュレーションしてみましょう。
天体を中央固定
食の進行をシミュレーションしようとして、天体を拡大した状態で時間を進めると、天体が移動して星図の範囲外に出てしまう。こんなときは下の(A)(B)いずれかの方法で、天体を常に星図中心に表示するように固定しよう。
(A)天体を左クリックすると表示される「天体情報パレット」で[中央固定]ボタンをクリック。
(B)天体を右クリック→マウスメニューの[中央固定]をクリック。
固定するのは月と金星どちらでもよいが、視野範囲を狭く(ズームイン)してより詳細を見たい場合には、金星を中央固定するとよいだろう。こうすれば、時刻を変えても金星が常に中央にあり、星図画面の外へ出てしまうことはない。
任意の間隔で時間を進める
ステラパッドの時刻数値をクリックすると、時間を進めるとともに金星が月に潜入していく様子がわかる。左クリックで時間が進み、右クリックで時間が戻る。これで、潜入・出現のおおよその時刻を読みとることができる。また、マウスボタンを押し続けるとアニメーションのような連続描画も可能。時刻を指定して金星と月の位置を確認するということもできるのでとても便利。
メニューバーの[表示]から[ステップボックス]をクリックするとステップボックスが表示される。これも時間をステップさせるときに使用する。ステラパッドは「桁」でしか変更できないが、ステップボックスでは5秒や30秒といった時間間隔のステップが可能。
アニメーションで時間経過を見る
金星食のように短時間で刻々と位置関係が変わる食現象は、アニメーションを実行すると経過がわかりやすい。以下の方法でアニメーションを設定・実行して、秒単位で潜入・出現の時刻をシミュレーションできる。
(A)メニューバー[設定]の[アニメーション]から[設定]をクリックすると[アニメーション設定]ダイアログが表示される。アニメーションを実行するにあたって時間間隔を設定できる。
(B)アニメバーは、アニメーションをワンクリックで実行できるので便利。ステップ時間や1秒間にどれだけの時間進めるか(速度)も、プルダウンメニューから設定できる。
観測地を変更する
遠い金星が近い月に隠されるため、観測場所によって潜入・出現の時刻や、月のどこから入ってどこから出てくるのかも変わる。ステラナビゲータで下図の方法で場所を変えてシミュレーションすると、その違いの大きさがよくわかる。また、同じ時刻でも観測地が異なれば月と金星の高度は違う。したがって、場所の設定はとても重要となる。
観測場所を変えて天体の中央固定を解除し、星図の視野範囲を広げて見ると、南北に長い日本列島では月と金星の高度が観測場所によってずいぶん変わることが実感できる。
(1)メニューバーの[設定]または設定バーから[場所]をクリックして、[場所]ダイアログを表示(左図)
(2)以下のいずれかの方法で観測地を設定
(a)地図をクリック(b)都市名の選択(c)緯度経度の直接入力
札幌と鹿児島での金星食の潜入をシミュレーション(Photoshopで画像合成)。月を中央に固定、[光跡残し]を[常時残す]にして3分間隔でステップ描画している。観測地によって月への潜入位置や月の傾きが異なる。
広い視野範囲で、[光跡残し]を[常時残す]にして金星食を観察する場所を変えてみた。上から札幌、東京、大阪、鹿児島の様子。まもなく金星が月に隠される2時35分であるが、北へ行くほど高度は高くなることがわかる。