彗星が肉眼では見えないとき
彗星はまだよく見えない、あるいはもう暗くなってしまったという時、撮影できるのかな?と思うかもしれません。むしろ見えないときこそ、撮影の方が淡い彗星をじっくり見つけることができます。
彗星が双眼鏡や望遠鏡でかろうじて見える程度の明るさの時は、星の日周運動を打ち消す「赤道儀」にカメラを載せて長時間露出します。
<必要なもの>
マニュアルモード機能付のデジタルカメラ、三脚、赤道儀
1.まず天文ソフトで撮影リハーサル
天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」を使うと、アイソン彗星の見え方をあらかじめ調べることができるほか、主なカメラ機種の写野でどのように収まるかをシミュレーションすることができます(写野は個別設定も可能)。
2.問題発生! 長時間露出では天体がぶれる
「彗星が明るいときは」と同様の方法で固定撮影。かすかな天体を映し出すにはさらに露出時間の長いバルブ撮影をする必要がありますが、数十秒もすれば、左の図のように天体が伸びて写ってしまいます。
これは星の「日周運動」によるものです。星は地上から見ると、北極星を中心にして1日にほぼ1回転するように見えます。この動きが、「線」としてとらえられるのです。
3.そこで赤道儀を使って追尾撮影
「赤道儀」があれば、「線」に写ってしまう彗星を本来の「点」のように写せます。
赤道儀は、日周運動に合わせてゆっくり回転する装置です。これにカメラを載せれば、天体像が伸びることなくバルブ撮影できます。
1万円台から入手できる、手のひらサイズのコンパクトな赤道儀もあります。
- 「ポラリエ」(ビクセン)
- 「ナノトラッカー」(サイトロンジャパン)
4.「極軸合わせ」で赤道儀をセッティング
赤道儀を使うにはまず、北極星を中心に回るように設定する「極軸合わせ」を行います。のぞき穴から北極星が見えるように設置します。
極軸合わせの支援アクセサリーとして、三脚への取り付けの際に35度の角度をつけられる「アングルプレート」や、北極星が見えなくても合わせられる「ポーラメーター」などがあります。
5.追尾撮影で、天体がきれいに撮れる
追尾撮影での撮影設定は、基本的に「彗星が明るいときは」で紹介した固定撮影の時と同様です。長めの露出時間を取れるので、感度を低めに抑えて画質を優先するなど、より自由にクオリティアップを図ることができます。
追尾撮影した写真では、星が点状にくっきり写ります(反対に、地上の景色はぶれて写ります)。また、光が画像の同じ位置に蓄積されるので、淡い彗星や暗い星もよりはっきりととらえることができます。