脈動オーロラの形状と降下電子のエネルギーの関係を解明する観測に成功

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地上と衛星による同時観測から、脈動オーロラの形状、降下電子のエネルギー、磁気圏の電子密度の管状構造の関係が示された。高エネルギー電子の分布の可視化や地球大気への降下メカニズムの解明につながる成果だ。

【2024年10月4日 名古屋大学

オーロラは、地球近傍の宇宙空間に存在する「磁気圏」から地球大気中に降り込んできた電子(降下電子)が大気中の窒素や酸素などの粒子と衝突して発光する現象だ。オーロラのうち、数秒から数十分の周期で明滅する特徴を持つものは「脈動オーロラ」と呼ばれる。脈動オーロラを作り出す電子(脈動オーロラ電子)の多くは、磁気圏の赤道面で発生する自然電磁波「コーラス波動」によって散乱され、宇宙空間から地球大気中へ降下する。

これまでの研究で、脈動オーロラ電子のエネルギーが高まっているときに脈動オーロラの形状が斑状になるという報告があった。また、脈動オーロラ電子のエネルギーが大きくなるには、コーラス波動が赤道面で発生した後に、地球に近い位置まで減衰せずに伝搬する必要があることがシミュレーションにより示唆されていた。しかし、これらの関係を支配する物理メカニズムの観測的な解明には至っていなかった。

国立極地研究所(研究当時・電気通信大学)の伊藤ゆりさんたちの研究チームは、脈動オーロラの形状と降下電子のエネルギーの関係を支配する物理メカニズムを明らかにするため、地上と衛星による同時観測のデータを用いた研究を行った。対象となったのは2021年1月12日の脈動オーロラで、ノルウェー・トロムソの全天型高速撮像カメラ(ASI)、大型大気レーダー(EISCATレーダー)、および磁気圏を飛翔するジオスペース探査衛星「あらせ」によって同時観測されたものだ。

脈動オーロラの同時観測のイメージイラスト
地上と宇宙からの脈動オーロラの同時観測のイメージイラスト(提供:名古屋大学リリース、以下同)

オーロラ画像、超高層大気の電子密度、磁気圏の波動と電子の時系列データを比較したところ、発光している領域の境界が明瞭な「斑状」の脈動オーロラの発生と、準相対論的電子(数十~100キロ電子ボルトの高エネルギー電子)の降下、コーラス波動の地球に近い位置までの伝搬、が同時に観測されていたことが明らかになった。

時系列データ
2021年1月12日に「ASI」、「EISCATレーダー」、「あらせ」によって観測された時系列データ。(MLT)磁気地方時、(MLAT)磁気緯度、(R)「あらせ」の位置を表す指標。オーロラの形状の違いに対応して、超高層大気の電子密度の様子、地球に近い位置におけるコーラス波動の観測の有無、降下電子のエネルギーが変化していることがわかる

伊藤さんたちはこの結果から、「磁気圏の電子密度の管状構造であるダクトが、コーラス波動の磁力線に沿った地球方向の伝搬を促し、さらにダクトの断面の形状を反映するようにして脈動オーロラの形状を決めている」という物理メカニズムを提案した。

物理メカニズムの模式図
観測結果から提案された物理メカニズムの模式図。磁気圏における電子密度の管状構造「ダクト」の有無によって、コーラス波動の伝搬の様子、降下する電子のエネルギー、および脈動オーロラの形状が変化する

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