恒星ジェットが作るバブルの衝撃波にゆがめられた原始惑星系円盤

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アルマ望遠鏡の観測データから、若い星の周囲に膨張するバブル構造が見つかり、このバブルに巻き込まれた原始惑星系円盤の形が変わっている様子が明らかにされた。

【2025年8月8日 アルマ望遠鏡

生まれて間もない恒星の周囲には、原始惑星系円盤と呼ばれる回転するガスの円盤が広がっている。また、若い恒星からはジェットの噴出も普遍的に見られる。これら円盤とジェット、さらにその周辺の環境が互いにどのように影響し合っているかについては、これまで詳細には知られていなかった。

茨城大学の逢澤正嵩さんたちの研究チームは、へびつかい座の方向約440光年の距離にある恒星「WSB 52」について、アルマ望遠鏡による観測データを再解析した。すると、原始惑星系円盤の付近に爆発的に膨張するバブル構造が見つかった。「アルマ望遠鏡の高性能な分光観測によって、膨張するバブルをちょうどCTスキャンをして調べたかのように、その断面が明らかになりました」(東京大学 折原龍太さん)。

WSB 52
(左)WSB 52の一酸化炭素分子12CO輝線画像。破線は膨張バブルによるモデルを、赤い星がWSB 52の位置をそれぞれ表す。0は連続波による原始惑星系円盤の観測画像の拡大図。7と8では分子雲内の前景による影響が強く見られる。(右)発見された現象の断面の概念図(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. Aizawa et al.、以下同)

さらに詳細に調べると、膨張バブルが恒星付近に衝撃波面を作り、衝突の結果として円盤が歪んでいる様子や、円盤の一部のガスが吹き飛ばされている様子も明らかになった。これまで他の若い星の周辺でも膨張バブルは見つかっていたが、円盤とバブルの衝突が明らかになったのは今回が初めてだ。

バブルと円盤の位置関係、さらにバブルの形状・エネルギーを合わせ考えると、数百年前にWSB 52から放出された高速ジェットが周囲の分子雲ガスと衝突し、圧力上昇により生じた爆発で膨張バブルが形成されたとみられる。従来、恒星ジェットは主に物質やエネルギーを周辺環境に供給する役割が注目されてきたが、今回の研究により、恒星ジェットがバブルを介して原始惑星系円盤そのものに直接的な衝撃を与えうることが示された。

衝撃波によって形がゆがめられた原始惑星系円盤の想像図
衝撃波によって形がゆがめられた原始惑星系円盤の想像図(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. Aizawa et al.)

今回のような爆発的膨張バブルが若い星で普遍的に発生していれば、太陽系を含む多くの惑星系形成過程に大きな影響を及ぼしてきた可能性がある。今後の研究で、爆発現象の頻度や円盤への影響がさらに明らかにされるだろう。

今回の研究成果の紹介動画「恒星ジェットが生む爆発に巻き込まれた原始惑星系円盤」

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