天の川銀河外縁部の原始星から噴出するアウトフロー・ジェット

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アルマ望遠鏡による観測で、天の川銀河外縁部にアウトフローとジェットを噴出する原始星が見つかった。環境が異なる外縁領域と太陽系近傍で、星形成過程は同様である可能性を示唆する結果だ。

【2025年8月1日 新潟大学

天の川銀河の外縁領域は、太陽系近傍と比較して炭素や酸素といった元素の存在比が少なく、形成初期の天の川銀河や遠方銀河の環境に類似していると考えられている。ただし、銀河外縁部で起こる星や惑星の形成過程が太陽系の近辺と同じなのか違いがあるのかは、よくわかっていない。

星の誕生や成長過程を調べるうえで重要なのが、生まれたばかりの赤ちゃん星(原始星)から両極方向にガスが噴き出す現象だ。このような現象は「アウトフロー」と呼ばれ、そのなかでも流れが速く指向性の高い成分は「ジェット」と呼ばれる。

アウトフローとジェットの想像図
アウトフロー(幅の広いガス流)とジェット(細く絞られたガス流)の想像図(提供:国立天文台

新潟大学の池田達紀さんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いて、天の川銀河の外縁部に存在する5つの星形成領域(Sh 2-283, NOMF05-16/19/23/63)を観測した。Sh 2-283はいっかくじゅう座の方向、残る4つはとも座からほ座にかけての方向で、いずれも銀河中心から約5万光年の距離にある。

観測の結果、NOMF05-19を除く4つの領域で原始星が発見された。このうちSh 2-283の原始星については、星の中心部から南北方向に向かって、秒速20km程度の広がったアウトフローと秒速70km程度で指向性の高いジェットが検出された。アウトフローとジェットの両方とも、はっきりとした放射の構造が確認され、ジェットに関しては放射が間欠的であることを示す弾丸構造も確認された。放射の構造まではっきりとらえたアウトフロー・ジェットの検出は、天の川銀河の外縁部においては今回が初めてだ。また、NOMF05-16、23、63領域で見つかった原始星でもアウトフローが検出されている。

Sh 2-283領域
(背景)天の川銀河における、中心と太陽系、今回の観測対象となった外縁領域の位置関係。(左下)Sh 2-283領域の赤外線3色合成画像。(右)一酸化炭素でトレースされたアウトフロー(グレー)とジェット。赤は地球から遠ざかる速度成分、青は地球に近づいてくる速度成分を表す。緑の星印の位置に原始星があり、十字部分にジェットの弾丸構造が存在する(提供:R. Hurt/NASA/JPL-Caltech/ESO)

今回発見されたアウトフローとジェットの物理的な性質や放射の構造を太陽系近傍のものと比較したところ、両者は物理的・構造的性質が非常に類似していることがわかった。星形成の初期過程が、天の川銀河の外縁部という特殊な領域においても太陽系近傍(天の川銀河の内側の領域)と同様であることを示唆する結果である。今後さらに観測例を増やすことで、様々な環境における星・惑星形成過程の詳細な様子が明らかになっていくだろう。

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