高温の恒星を楕円軌道で公転するホットジュピターを発見

このエントリーをはてなブックマークに追加
高温の恒星をやや歪んだ楕円軌道で公転するホットジュピターが発見された。ホットジュピターが楕円軌道から円軌道へと変わりながら中心星近くまで移動したとする「高離心率移動」の理論を支持する観測成果だ。

【2026年10月2日 東京大学】

太陽系外惑星のうち、恒星のすぐ近くを公転する高温の巨大ガス惑星は「ホットジュピター」と呼ばれ、これまでに500個以上発見されている。ホットジュピターは木星のように恒星から離れた場所で誕生し、その後で恒星の近くまで移動したと考えられている。

とくに表面温度が6000℃以上と太陽(約5500℃)よりも高温の恒星を公転するホットジュピターについては、他の天体の重力によって軌道が乱され、細長い楕円軌道となった後、恒星の影響で円軌道に近づきながら恒星付近に移動したと推測されている。こうした移動は「高離心率移動」と呼ばれるが、これまで発見された高温星周りのホットジュピターのほとんどは円軌道であり、高離心率移動を直接裏付ける観測的な証拠は限られていた。

ホットジュピターの想像図、高離心率移動のイメージ図
(左)ホットジュピターの想像図、(右)高離心率移動のイメージ図。①ホットジュピターは中心星から遠い場所で誕生し、円軌道(茶色の点線)を公転する。②外側を公転する重い惑星や恒星の伴星の重力によってホットジュピターの軌道が乱され、一時的に細長い楕円軌道(灰色の破線)になる。③中心星の影響で軌道が徐々に縮み、恒星に近い場所で円軌道(黒色の実線)を描くようになる(提供:(左)NASA, ESA, and L. Hustak (STScI)、(右)東京大学リリース)

東京大学の渡辺紀治さんを中心とする研究チームは、ケフェウス座の方向約800光年の距離に位置する、表面温度が約8400℃の高温の恒星「TOI-1355」を観測し、約2日周期で公転する惑星「TOI-1355 b」を発見した。

この恒星はもともと、NASAの系外惑星探査衛星「TESS」によって周期的な減光がとらえられていたが、TESSの観測だけでは、この減光が惑星のトランジット(惑星が恒星の手前を横切る現象)によるものかどうかは確定できていなかった。研究チームは多色同時撮像カメラ「MuSCAT3」を搭載した望遠鏡など、様々な地上望遠鏡で追加の観測を行い、この減光が惑星に由来するものである可能性が高いことを示した。

続いて、TESSの観測データの解析から減光を起こす天体の質量が木星の約5.8倍と求められ、この天体がホットジュピターであることが確認された。さらに、惑星が恒星の後ろに隠れることによるわずかな減光(二次食)が、円軌道では説明できないタイミングで発生していたことから、TOI-1355 bがやや楕円の軌道を描いていることも判明した。これは、これまで発見された高温星周りのホットジュピターとしては非常に珍しい特性だ。

TOI-1355系の光度変化
(上)TESSがとらえたTOI-1355系の光度変化。(赤)観測データ、(黒)モデル。この変化から惑星の質量と軌道離心率を測定した。惑星が円軌道なら、二次食によるわずかな減光は位相0.5(トランジットから公転周期の半分が経った時点)で起こるはずだが、実際にはそれより早い約0.36で起こっている(提供:Watanabe et al. 2026より一部改変)
(下)地球から見たTOI-1355 bの軌道のイラスト。楕円軌道のため恒星が軌道の中心からやや離れている。2026年時点では、地球から見ると恒星の縁をかすめるような軌道となっている(提供:東京大学リリース)

TOI-1355 bは、円軌道へ近づきつつある段階にあると考えられる。この発見は、熱い恒星の周りのホットジュピターが、高離心率移動を経て恒星の近くまで移動したという理論を裏付ける成果といえる。

さらに今回、TOI-1355 bの軌道がコマのように首振り運動をする「惑星軌道歳差」という、系外惑星では5例目となる珍しい現象も検出された。この現象によって地球から見た惑星の軌道面の向きが少しずつ変化し、トランジットが見えにくくなっている。トランジット観測が可能な時期は2033年半ばに終了すると推測されていて、今回の発見は、恒星の前を通らなくなる直前という絶妙なタイミングでの幸運な成果となった。惑星の大気組成や惑星軌道の解明に向けて、トランジットが見られる残り7年ほどの間の観測が急がれる。