星の進化と共に大きく膨らんだホットジュピター

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赤色巨星の周りを回る、木星よりやや大きいが質量は木星の半分しかない惑星が2つ見つかった。高温の巨大ガス惑星「ホットジュピター」がなぜ大きいのかについて解明する手がかりの一つとなるかもしれない。

【2017年11月30日 Keck Observatory

「ホットジュピター」と呼ばれる系外惑星は、中心星に極めて近いところを公転するために高温になっている巨大ガス惑星だ。質量は木星や土星と同程度だが、大きさはこれらの惑星よりも大きい傾向にある。

ホットジュピターが大きくなる要因として、惑星大気への熱の出入りが関連していると考えられている。その物理過程を説明するためにいくつかの理論が構築されてきたが、「ある惑星系がどのように進化するのかを数百万年間も見守ることはできませんから、ホットジュピターの膨張に関する理論は証明も反証も困難でした」(米・ハワイ大学天文学研究所 Samuel Grunblattさん)。

先行研究によれば、惑星を膨らませる主要な過程が中心星からの直接的なエネルギー流入であれば、赤色巨星を巡るホットジュピターは大きく膨張しているはずである。このことを確かめるため、Grunblattさんたちの研究チームは系外惑星探査衛星「ケプラー」の観測データから、赤色巨星の周りを回るホットジュピターを探した。そして、かに座の方向の赤色巨星「K2-97」と、おとめ座の方向の赤色巨星「K2-132」それぞれの周りにあるホットジュピターの大きさが、木星の1.3倍ほどであることを見出した。

これら2つの惑星は大きさが似ているだけでなく、公転周期が約9日であることや質量が木星の半分ほどしかないことも似ており、まるで遠く離れた双子のようである。

ホットジュピター「K2-132 b」とと赤色巨星「K2-132」の想像図
(左上)中心星「K2-132」が主系列星だったころの、星と系外惑星「K2-132 b」の概念図。(左下)K2-132が赤色巨星へと進化した現在の概念図。(右)ホットジュピターK2-132 b(手前)から見た赤色巨星K2-132の想像図(提供:KAREN TERAMURA, UH IFA)

次にGrunblattさんたちは、惑星が赤色巨星から受ける熱吸収の効率や惑星内部への熱輸送、それらによって引き起こされる惑星の膨張と密度の低下をモデル計算した。そして、惑星の膨張には赤色巨星からの放射の増加が必要だったが、受け取った放射の量は予想より少なかったらしいことを示した。

わずか2例で結論を出すのは早計だが、中心星からの熱によって直接的に惑星が膨張するというシナリオとは一致する結果である。今後、赤色巨星を巡るホットジュピターをさらに見つけることにより、惑星膨張に関する説の妥当性が確かめられるようになるだろう。

私たちの太陽も、数十億年後には赤色巨星となる。今回の研究は系外惑星だけでなく、太陽系の惑星や生命の将来を知るうえでも重要なものだ。「中心の星の変化に対して惑星がどう変化するのかをもっとよく理解できれば、太陽の進化が地球の大気、海、生命にどんな影響をもたらすかについてもわかり始めるでしょう」(Grunblattさん)。