系外惑星の大気から二酸化炭素を検出

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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測によって、太陽系外では初めて、惑星の大気中から二酸化炭素が検出された。

【2022年9月1日 NASA JPL

二酸化炭素が検出されたのは、おとめ座の方向700光年の距離にある系外惑星WASP-39 b。私たちから見て恒星の前を惑星が通過するときの減光を観測するトランジット法によって2011年に発見され、2019年にボカプリンズ(Bocaprins)と命名された。WASP-39 bは恒星から太陽~水星間の約8分の1しかない距離の軌道を4日強の周期で回っていて、表面は摂氏約900度まで加熱されている。そのせいもあって、質量は木星の約4分の1(土星とほぼ同じ)だが、直径は木星の1.3倍まで膨らんでいる。

WASP-39系の想像図
WASP-39系の想像図。左上が恒星で、中央が惑星WASP-39 b(提供:NASA, ESA, CSA, and J. Olmsted (STScI))

WASP-39 bのように恒星の前を通過する惑星は、大気を調べる機会も与えてくれる。恒星からの光が惑星に遮られるとき、その一部は惑星の大気を通過して私たちへ届く。大気中に含まれる水蒸気や二酸化炭素といった成分は、それぞれ特定の波長の光を吸収するため、惑星が通過した際の恒星のスペクトルのうちで大きく減光された波長を調べれば、惑星の大気組成を知ることができるのだ。

これまでにWASP-39 bの大気からは、NASAのハッブル宇宙望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡などの観測で、水蒸気、ナトリウム、カリウムが検出されている。一方、二酸化炭素らしき信号も見つかっていたが、他の可能性を排除することはできなかった。過去には別の系外惑星(HD 209458 bなど)で二酸化炭素が見つかったとする報告もあったが、いずれも不確かさが残っていたり、その後の観測では検出されなかったりしている。

WASP-39 bが恒星の前を通過したときの光度変化
WASP-39 bが恒星の前を通過したときの光度変化。JWSTが分光観測した近赤外線のうち3つの波長を選び、色分けしてグラフ化(青が波長3.0μm、緑が4.3μm、赤が4.7μm)。減光部分を拡大したのが下のグラフで、二酸化炭素による吸収が強い4.3μm(緑)が他の波長よりも減光していることがわかる。画像クリックで拡大表示(提供:NASA, ESA, CSA, and L. Hustak (STScI); Science: The JWST Transiting Exoplanet Community Early Release Science Team、以下同)

二酸化炭素が存在する決定的な証拠は、今年7月10日に実施されたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の近赤外線分光器(NIRSpec)による分光観測から得られた。JWSTによる初期リリース科学プログラムの一環として、いち早く系外惑星のデータを提供するための観測が実施されていて、WASP-39 bもその対象となっていた。

JWSTがWASP-39 bの恒星面通過をとらえたところ、波長4.1~4.6μmの範囲が他の波長よりも少しだけ多めに減光していた。これは二酸化炭素による吸収の結果であり、系外惑星の大気における二酸化炭素の存在を示す初の決定的な証拠となった。

WASP-39 bの大気に含まれる二酸化炭素の証拠
WASP-39 bの大気に含まれる二酸化炭素の証拠。グラフの横軸は波長で、縦軸はWASP-39 bが恒星の前を通過したときに各波長がどれだけ減光されたかを表す。4.3μm付近のピークが二酸化炭素によって吸収される光。白い丸は実際の観測値で、青はこれに一番よく合う大気モデル。画像クリックで拡大表示

系外惑星が恒星を通過する際のスペクトルが、波長3~5.5μmの範囲でこれだけ細かく測定されたことは、JWST以前にはなかった。この波長帯は二酸化炭素だけでなく、水やメタンなどの存在量を測定するためにも重要だ。「WASP-39 bでこれだけはっきりと二酸化炭素が検出されたことは、地球サイズの小さな惑星で大気を観測する上でも幸先の良い結果です」(米・カリフォルニア大学サンタクルーズ校 Natalie Batalhaさん)。

大気の組成は、その惑星の起源や進化を知るための手がかりとなる。「二酸化炭素を測定すると、この巨大ガス惑星を形成するのに使われた固形物質とガス状物質の比率がわかります。JWSTが様々な惑星を観測すれば、惑星がどのように形成されるか、さらには太陽系がどのように特殊なのかについて、洞察が得られることでしょう」(米・アリゾナ大学 Mike Lineさん)。

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