原始惑星系円盤のすき間を公転する系外惑星を発見
近年の観測技術の進歩によって、惑星が生まれつつある若い恒星の研究が大きく進んでいる。数百個の恒星系で原始惑星系円盤の高解像度画像が撮影され、惑星が誕生している証拠となるリングや渦状腕構造もたくさん見つかっている。
2018年には原始惑星系円盤の内部に原始惑星を持つ恒星系「PDS 70」が発見された(参照:「形成中の系外惑星の撮像に成功」/「原始惑星系円盤の隙間に2つの惑星を直接撮像」)が、これ以降、円盤内部に惑星が存在する確実な例は見つかっていなかった。
蘭・ライデン大学のRichelle van Capelleveenさんを中心とする研究チームは、チリのVLT望遠鏡に搭載された系外惑星撮影装置「SPHERE」を使い、主星から離れた系外惑星を見つけるプロジェクト「WISPIT」を進めている。このプロジェクトで新たに「WISPIT 2 b」という系外惑星が発見された。
VLT望遠鏡で撮影された惑星「WISPIT 2 b」(星周円盤のすき間の中に見える光点)。波長1.6~2.2μmの近赤外線で撮影。中心星は遮蔽されている(提供:ESO/R. F. van Capelleveen et al.)
主星の「WISPIT 2」(TYC 5709-354-1)はわし座の方向約430光年の距離にあり、質量は太陽の1.08倍、年齢は510万年と推定されている。誕生直後の太陽によく似た若い恒星だ。
van CapelleveenさんたちはVLT/SPHEREで複数回の近赤外線撮影を行い、この恒星が原始惑星系円盤を持つことをまず突き止めた。この円盤にすき間が見られたことから、惑星が存在するかもしれないと考えて通常の光と偏光で追観測を行い、WISPIT 2 bの姿をとらえることに成功した。
惑星の進化モデルに基づく解析から、この惑星は木星の約4.9倍の質量を持つ巨大ガス惑星と推定されている。主星からの距離は約57auで、海王星軌道の2倍近い。
「この惑星を発見したのは素晴らしい経験で、私たちは信じられないほど幸運でした。WISPIT 2は若い太陽といえる恒星で、若い星の中でもほとんど研究されていないグループに属しており、このような壮観なシステムが見つかるとは思いませんでした」(van Capelleveenさん)。
原始惑星系円盤の内部で惑星が見つかるのはPDS 70星系以来となる。さらに、惑星が円盤のガスや塵を集めたりはじき飛ばしたりしてできた「すき間」の中で惑星の姿がとらえられたのは今回が初めてだ。
「これまでに見つかっている、やや年齢の経った若い恒星を遠い軌道で公転する巨大ガス惑星が、まさに私たちが今見ているように、主星から離れた場所で形成されうるということを示す強い観測的証拠です」(アイルランド・ゴールウェイ大学 Christian Ginskiさん)。
また、van Capelleveenさんたちはこの発見を米・アリゾナ大学の研究グループにも知らせ、同グループのLaird Closeさんたちがチリのマゼラン望遠鏡を使って、Hα線でWISPIT 2を観測した。
その結果、Hα線でもWISPIT 2 bの姿をとらえることができ、惑星の存在を裏付けた。また、この惑星が活発にガスや塵を集積している段階にあることもわかった。
さらにCloseさんたちは、主星に最も近いすき間の中に、もう一つの惑星候補「CC1」も発見した。Closeさんたちはアリゾナ大学の大型双眼望遠鏡「LBT」を使い、中間赤外線でもWISPIT 2を撮像している。CC1の質量は木星の約9倍、主星からの距離は約14~15auで、太陽系では土星軌道と天王星軌道の間に相当する。
マゼラン望遠鏡とLBTで撮影されたWISPIT 2星系。明るく白いリングと外側にある暗いリングの間に見える紫色の光点が「WISPIT 2 b」。最も内側のすき間の中にある赤色の光点が、もう一つの惑星候補「CC1」(提供:Laird Close, University of Arizona)
「今回見つかった2個の惑星は、太陽系の木星と土星が今より5000倍若かった時代の様子に少し似ています。WISPIT 2の惑星は太陽系の巨大ガス惑星より約10倍重く、軌道も広がっています。しかし大まかな見た目は、異星人の天文学者が45億年前に私たちの太陽系の『赤ちゃん写真』で見たであろう姿とさほど変わりません」(アリゾナ大学 Gabriel Weibleさん)。
今回の両チームの観測によって、WISPIT 2の周囲には、2個の惑星、4本のリング、4本のすき間が存在するらしいことが判明している。とくに、原始惑星系円盤に見られる「すき間」が原始惑星によって作られることを証明した点が重要だとCloseさんは述べている。
「こうした円盤のすき間が原始惑星によって作られるとする論文が何十本も書かれていますが、今回の発見まで、明確な証拠は見つかっていませんでした。実際、非常に暗い『すき間』は見えているものの、その内部に暗い系外惑星は検出できず、文献上、あるいは天文学全般において、このことは一種の緊張状態となっていたのです。原始惑星がこのようなすき間を形成できることを疑う人々もたくさんいましたが、実際にそれが可能であることが今回明らかになりました」(Closeさん)。
〈参照〉
- Leiden University:First ring-forming embedded planet discovered around a young sun-like star
- The University of Arizona:A growing baby planet photographed for first time in a ring of darkness
- University of Galway:Astronomers make unexpected discovery of planet in formation around a young star
- ESO:A very hungry planet
- Astronomie.nl:Discovery of the first ring-shaping embedded planet around a young solar analog
- The Astrophysical Journal Letters:論文
〈関連リンク〉
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