最遠方銀河の記録をハッブル宇宙望遠鏡が更新、赤方偏移11.1

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ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、134億年前の宇宙に存在するとみられる、史上最も遠い銀河が発見された。誕生からわずか4億年後の宇宙に存在しているこの銀河は、小さいながらも活発な星形成を行っており、驚くほど明るい。

【2016年3月7日 HubbleSite

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)がその性能を限界いっぱいまで発揮して観測した「GN-z11」は、おおぐま座の方向に位置している、まだ幼くて驚くほど明るい銀河だ。GN-z11はビッグバンからわずか4億年後の宇宙、つまり134億年前の宇宙に存在している。これは、観測史上最も過去の銀河、すなわち観測史上最も遠い銀河である。

銀河「GN-z11」
銀河「GN-z11」。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, P. Oesch (Yale University), G. Brammer (STScI), P. van Dokkum (Yale University), and G. Illingworth (University of California, Santa Cruz))

従来GN-z11までの距離は、HSTと赤外線天文衛星「スピッツァー」との観測から得られた天体の色から見積もられていたが、より正確な距離の測定には分光観測が必要だ。今回、HSTによってGN-z11を分光観測したところ、天体の距離の指標となる「赤方偏移」の値が11.1と求められた。

宇宙の膨張によって遠方の天体からの光は波長が伸びて地球に届き、その波長の伸び、つまり赤方偏移の値は遠方の天体ほど大きくなる(波長は「赤方偏移の値+1」倍になる)。これまでの記録は8.68で132億年前の宇宙に存在する銀河だったが、GN-z11はさらに2億年宇宙をさかのぼったことになる。

「HSTは、地上に設置されたはるかに大きな望遠鏡によるすべての記録を打ち破るということをやり遂げました。この記録は、2018年打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測まで、破られることはないでしょう」(米・エール大学 Pieter van Dokkumさん)。

HSTとスピッツァーによる観測画像から、GN-z11の大きさは天の川銀河の25分の1、質量は天の川銀河の1パーセントであることがわかった。このような小ささにもかかわらず、GN-z11の成長は早く、現在の天の川銀河の約20倍以上という率で星を形成している。そのおかげで、この銀河は134億年前の(非常に遠い)宇宙にあっても、発見し詳細な観測ができるほど明るく見えているのだ。

「HSTがここまでやるとは思っていませんでした。HSTとスピッツァーはすでに、JWSTの域に達しています」(エール大学 Pascal Oeschさん)。「つまり、JWSTは必ずや、宇宙で最初に誕生した多くの若い銀河を発見するでしょう」(カリフォルニア大学サンタクルーズ校 Garth Illingworthさん)。