赤方偏移7.730、もっとも遠い銀河の記録更新

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確実性の高い手法で求められたものとしてはこれまでで最遠方となる、赤方偏移7.730の銀河が発見された。およそ131億年前の初期宇宙に存在する銀河の姿だ。

【2015年5月8日 HubbleSiteW. M. Keck Observatory

うしかい座の方向に発見された銀河「EGS-zs8-1」は、2010年から2013年にハッブル宇宙望遠鏡(HST)を用いて行われたサーベイ観測により、特異な色合いを持つ銀河として確認された。赤外線天文衛星「スピッツァー」による観測も行われたほか、米・ハワイのケックI望遠鏡の分光観測から、遠方宇宙までの距離の目安である「赤方偏移」の値が7.730と求められた。

膨張する宇宙においては遠くにある銀河ほど観測者から高速で遠ざかり、その光の波長は長い方にシフトする。その程度を示すのが「赤方偏移」だ。赤方偏移の値は分光観測以外でも求められるが、より確実性の高い分光観測によって銀河について得られたものとしては、EGS-zs8-1の値はこれまでで最大、つまりもっとも遠くにある銀河ということになる。EGS-zs8-1は131億年という時間をかけて地球に届く、初期宇宙の銀河の姿なのだ。

CANDELSサーベイの画像中に確認されたEGS-zs8-1
HSTを用いた「CANDELSサーベイ」の画像中に見つかった銀河EGS-zs8-1と、その近赤外線画像(枠内)(提供:NASA, ESA, P. Oesch and I. Momcheva (Yale University), and the 3D-HST and HUDF09/XDF Teamso)

EGS-zs8-1は年齢1億歳ほどとみられ、「誕生したばかりの初期宇宙にあってすでに今日の天の川銀河の15%以上もの質量を持つ」(今回の発表を行ったPascal Oeschさん)という。この時代に見られる天体としてはもっとも大きく明るい部類だ。天の川銀河ではおよそ1年に1個のペースで星が生まれているが、この銀河ではその80倍以上もの速さで星形成が進んでいる。当時のこうした若い星々の放射が、初期宇宙における「宇宙再電離」現象を推し進めたのだろう。

130億年以上前にすでに大きな銀河が存在していたことを確認した今回の成果は、2018年に打ち上げ予定の「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」による数々の発見を予感させるものでもある。JWSTではさらに遠く、誕生当時に近い宇宙に迫れるだけでなく、銀河内のガスについてはるかに詳しい情報を得られるだろう。

研究チームのGarth Illingworthさん(米・カリフォルニア大学)は、「JWSTの観測から、宇宙の夜明けとも言える時代の銀河形成について、より完全な絵が描ける日が来ることでしょう」と期待を寄せている。