木星の衛星エウロパに間欠泉らしき現象
【2016年9月27日 HubbleSite/NASA】
木星の第2衛星エウロパは1610年にガリレオが発見した4つの衛星のうちの一つで、双眼鏡を使えば木星のすぐそばに光点として見ることができる。直径は約3100kmで、地球の月よりもやや小さい。
エウロパの表面は冷たく硬い厚い氷に覆われていて、その地下には地球の海水の2倍にあたる量の水をたたえた広大な海が存在するとみられている。エウロパの海は、太陽系内において生命が存在する可能性の最も高い場所の一つと考えられており、地球外生命探査の観点からも非常に関心の高い天体だ。
NASA宇宙望遠鏡科学研究所のWilliam Sparksさんたちの研究チームはハッブル宇宙望遠鏡(HST)で、木星の前を通過するエウロパの撮影観測を行った。同研究チームの本来の目的はエウロパの表面に外気圏(薄い大気の層)が存在するかどうかを確認することだったが、その観測画像中に指のような突出した構造がとらえられた。15か月間で10回実施された観測中、3回の観測で、噴出のようなものが見えている。
この現象はエウロパの間欠泉と考えられている。2012年には別のチームがエウロパの南極域に水蒸気の噴出の証拠を検出しており、今回の結果で間欠泉の存在する可能性がさらに高まったといえる。間欠泉は上空200kmまで噴き上がり、その後エウロパの表面に雨のように降り注いでいるようだ。
もし本当に間欠泉であると確定されれば、エウロパは土星の衛星エンケラドスに続いて、太陽系内において水蒸気の噴出が確認された2つ目の衛星となる。2018年打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による赤外線観測から事実が明らかになるだろう。NASAはエウロパに探査機を送り込むミッションも計画しており、間欠泉の存在は接近観測からも確認されるかもしれない。
〈参照〉
- HubbleSite: NASA's Hubble Spots Possible Water Plumes Erupting on Jupiter's Moon Europa
- NASA: NASA’s Hubble Spots Possible Water Plumes Erupting on Jupiter's Moon Europa
- The Astrophysical Journal: Probing for Evidence of Plumes on Europa with HST/STIS 論文
〈関連リンク〉
- HubbleSite: http://hubblesite.org/
- アストロアーツ 投稿画像ギャラリー: 2016年 木星
関連記事
- 2024/11/07 水星の特異な磁力線から示唆される水の形成
- 2024/10/15 木星の衛星を探査、「エウロパ・クリッパー」打ち上げ成功
- 2024/08/27 探査機「ジュース」、世界初の月・地球ダブルスイングバイを実施
- 2024/03/29 衝突シミュレーションで探る氷衛星エウロパの構造
- 2023/06/16 エンケラドスの地下海に大量のリンが存在
- 2023/04/17 木星氷衛星探査機「JUICE」打ち上げ成功
- 2023/03/23 水蒸気で囲まれた原始星に、太陽系の水が経てきた歴史を見る
- 2022/10/06 探査機ジュノー、エウロパに接近飛行
- 2022/05/06 グリーンランドと木星のエウロパに共通する地形
- 2021/11/12 130億年前の銀河に水分子を発見
- 2021/07/02 地球の生命が他の惑星で生存できる確率
- 2021/05/18 地球の水は9割以上コアに取り込まれた
- 2021/04/30 二酸化炭素が豊富な水を隕石中に初めて発見
- 2021/03/23 火星の水は地殻に閉じ込められている
- 2021/02/18 火星の大気から塩化水素を検出
- 2021/01/07 リュウグウは生まれながらにして乾いていたか
- 2020/12/24 エウロパの地下海に熱水活動の証拠
- 2020/11/02 日の当たる月面にも水分子が存在
- 2020/10/05 火星南極の地下湖、再観測でも確認
- 2020/09/28 北半球にも新鮮な氷が存在するエンケラドス