開発者が語る「ステライメージ」、20年の歩み
【2017年2月14日 アストロアーツ】
銀塩フィルムによる天体写真が全盛を極めていた20年ほど前のことです。SBIG社が発売した、オートガイド用ではない「天体撮影」用の冷却CCDカメラが広がりを見せはじめました。銀塩写真に比べれば解像度はまだまだでしたが、高感度であることや、デジタル処理で光害を除去できることなど、デジタルならではの優位性に気付いた天体写真家がこぞってこれを使い始めました。
冷却CCDカメラで撮影したデジタルデータを処理するソフトはその頃すでにありましたが、すべて外国製であったために日本人にはなじみにくいものでした。そこでアストロアーツでは、天文シミュレーションに続く国産天文ソフト第2弾として、「ステライメージ」を1997年2月14日にリリースするに至りました。長時間をかけて集めた星の光を1ビットたりとも無駄にしないために、内部処理は256階調の8ビットではなく32ビット浮動小数演算を使うことで、処理過程におけるケタ落ちを極力なくす画期的な画像処理ソフトでした。
翌1998年にリリースされた「ステライメージ Ver.2」は、岡野邦彦氏が考案した「デジタル現像」を実装したことで大きくブレークすることになります。これはハイコントラストになりがちなデジタル画像の仕上がりを、銀塩写真のように階調豊かなものにする処理です。当時、岡野氏が他のソフトを使って数回のステップを踏んで同様の処理をしていた様子を拝見し、それをまとめて処理できるようにしたところ、あっという間にこの手法が普及することになったのです。このころは武藤工業も冷却CCDに参入するなど、ハードウェアも急速な充実がみられた時代で、作品の品質が日進月歩で良くなっていった頃でした。
その後は、スターシャープやスターエンハンスなどの画像処理テクニックの向上と、冷却CCDカメラの高解像度化などもあり、天体写真のデジタル化が進んでいくことになります。一般向けのカメラも、コンパクトから一眼レフまですべてデジタル化が進み、ついには銀塩をしのぐことになります。
このように、たった20年で写真の世界はほぼデジタル一色となり、銀塩写真は遠い過去のことになりつつあります。今では「ステラショット」で撮影も楽になり、「ステライメージ8」を使えば画像処理も手軽になりました。
いかに撮影機材や技術は進歩しても、星たちは変わらず夜空に美しく輝き続けています。バージョン8となったステライメージが、これからも天文ファンの皆様の天体画像をより良いものとし、さらに天文ライフをエンジョイするお役に立てば本懐です。
株式会社アストロアーツ/ステライメージ製作委員会
ステライメージの歴史
1997年 2月 | バージョン1 / 32ビット浮動小数点画像処理エンジン |
1998年 5月 | バージョン2 / デジタル現像、Lrgb合成 |
1999年11月 | バージョン3 / スターシャープ、周辺減光補正、画像復元、仮想記憶 |
2003年 4月 | バージョン4 / デジタルカメラRAW対応、バッチ処理強化、高速化 |
2005年 3月 | バージョン5 / マルチバンドシャープ、マトリスク色彩強調、動画対応、RAW対応の強化 |
2008年 4月 | バージョン6 / ワークフロー、選択マスク、サムネールインタフェース |
2013年 3月 | バージョン7 / チャンネルパレット、オートストレッチ、コンポジット自動位置合わせ |
2017年 2月 | バージョン8 / インテリジェントなコンポジット処理、統合画像調整インタフェース |
〈関連リンク〉
- アストロアーツ: 「ステライメージ8」
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