ボイジャー1号、37年ぶりに軌道修正用スラスター噴射
【2017年12月4日 NASA JPL】
探査機「ボイジャー1号」は1977年9月に打ち上げられ、1979年3月に木星、1980年11月に土星にそれぞれ最接近して探査を行った。その後も太陽系の外に向かって飛行を続け、2012年についに太陽圏(太陽風の届く範囲)を脱出し、史上初の「恒星間空間に到達した人工天体」となった。現在は地球から約210億km離れたへびつかい座の方向にあり、さらに遠くへと飛び続けている。
ボイジャー1号をはじめ探査機には、機体の姿勢を制御したり軌道を修正したりするための「スラスター」という装置が付けられている。ボイジャーの運用チームは2014年以降、ボイジャー1号の姿勢を制御するスラスターが劣化してきていることに気付いていたが、機械的に修理する手立ては当然なかった。姿勢の制御は通信用アンテナを地球に向けるために非常に重要なことだ。
そこで運用チームは、本来は軌道修正のために使われる4個セットのTCMスラスターを姿勢制御に使用できるかどうか、テストしてみることにした。TCMスラスターは、ボイジャー1号の土星最接近以降は使用機会がなかったので、37年ぶりのスラスター噴射ということになる。また、当時TCMスラスターが姿勢制御のために使われたことはなかったので、姿勢制御のための使用は今回が初めてとなる。
11月28日、運用チームは4つのTCMスラスターを37年ぶりに動作させて0.01秒刻みで噴射し、探査機の向きを変えることができるかどうか試した。そして、19時間35分かけて探査機から地球のアンテナに戻ってくる結果を、はやる思いで待った。すると翌29日、見事に、TCMスラスターが姿勢制御スラスターと同じように完璧に作動したことを知らせる信号が届いたのだ。
「37年間使われなかったスラスターが今でも利用可能なおかげで、ボイジャー1号の寿命を2~3年延ばすことができるでしょう」(ボイジャー・プロジェクトマネージャー Suzanne Doddさん)。
運用チームは来年1月に姿勢制御をTCMスラスターへと切り替える予定だが、そのためには各スラスターについているヒーターも動作させる必要がある。もしそのための電力が残っていない場合には、やはり姿勢制御用スラスターを使い続けることになる。
なお、ボイジャー1号より2週間早く打ち上げられた探査機「ボイジャー2号」の姿勢制御スラスターは、1号のものほど劣化していないようだが、運用チームは2号についても同様のTCMスラスターのテストを実施すると思われる。ボイジャー2号は現在地球から約175億km離れたところを飛行中で、数年以内には太陽圏を離れ恒星間空間へと到達するとみられている。
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